放課後の向うがわⅡ-21


「一流のエンターテイナーは、思わぬハプニングも、舞台演出に変えてしまうもの。
 で、出番を間違って舞台に上がって来てしまった先生にも……。
 このシーンに参加していただくことにしたってわけ」

 あけみ先生は、ゆっくりと川上先生に歩み寄った。
 上体をかがめ、下から舐め上げるように視線を上げる。
 子供のころ読んだ漫画の、ろくろ首を思い出した。

「ほんとに美味しそうな身体。
 縄のおふんどしが、よく似合いましてよ。
 ほら、このお腹の肉。
 縄に乗りあげて。
 とっても素敵。
 男なら、精子をかけずにいられませんわ。
 川上先生?
 いったい何人の男が、この身体に精子をかけてきましたの?」
「い、岩城先生……。
 下ろしてください」
「まぁ。
 誰かさんと同じことを言うのね。
 気が合って、うらやましいわ。
 でも、つまらない。
 どうしてさしあげようかしら?」
「下ろして!
 下ろしてぇぇ」

 川上先生は、空中で身をよじった。
 でも、両脚が宙を藻掻くだけだった。

 天井の梁が、かすかに軋んだ。

「案外、頭の悪い人ね。
 そんな格好で喚いたって、事態が好転しないことくらい……。
 わかりそうなものだわ。
 美里!
 何、引っこんでんのよ。
 こっち、おいで」

 あけみ先生の声が、突然頬を叩いた。
 こうして、観客席の隅に隠れてたわたしも、舞台に引っ張りあげられることになった。

「川上先生、この子、ご存知でしょ?」
「た、棚橋さん!
 岩城先生、まさかこの子にまで?」
「ほんとに、気が合いますわね。
 誰かさんと。
 まったく同じこと聞くんだから。
 でも、いいですか、先生。
 この生徒には、縄もなんにも掛かってないでしょ。
 つまり、この子は自由なの。
 てことは……。
 自分の意志でここにいるわけ。
 そして……」

 あけみ先生は、わたしの腕を掴むと、自分の脇に引っ張り寄せた。
 剥き出しの骨盤が、先生の太腿にあたった。

「ほら、ご覧くださいな。
 2人の格好。
 同じでしょ。
 下半身だけ、素っ裸。
 つまり、2人はチームなの。
 これが、チームのユニフォーム。
 すなわち、この子は、わたしの助手ってわけ。
 おわかり?」

 あけみ先生は、わたしの腕を掴んだまま、川上先生の正面に回った。

「美里、見てごらん、この身体。
 これが、大人の身体よ。
 体育の着替えとかで、同級生のは見てるだろうけど……。
 ぜんぜん違うでしょ?
 身体の丸みが。
 生殖可能な雌同士でも、成熟度合いによって、こんなに違うものなの。
 男はね……。
 こういう身体が、大好きなのよ。
 こういう裸を見ると……。
 精子を出したくなるの。
 わたしが男だったら、このまま突っこんでるかも」

 あけみ先生の手の甲が、ベールを掲げるように、川上先生の太腿を撫であげた。

「い、いやぁぁぁぁ」

 絹織みたいな声が、窓を目指して伸びた。
 声は、窓を塞ぐ横板の隙間を抜け、空に逃げていく。

「素晴らしいソプラノですこと。
 でも、閨でこんな声出したら、近所迷惑ですわよ。
 少し、調律が必要みたいね。
 ここかしら?」

 あけみ先生の指が、川上先生の乳房に伸びた。
 器用に束ねられた指先が、乳首を摘む。
 指先が、葡萄を潰すように撓った。

「痛いっ。
 痛いぃぃぃ」
「生きてる証拠ですわ」

 あけみ先生の手首が裏返った。
 乳首は摘んだままだった。
 乳輪がよじられ、渦巻状に皺が走った。

「ひぎぃ」

 川上先生が、全身で跳ねた。
 背中の柱が、ギシギシと音を立てた。

「ちょっと、重量超過かしら。
 でも、ほら。
 思ったとおり」

 あけみ先生は、乳首から指を離した。
 離れた指先が伸び、乳首を指し示してる。

「起っちゃった。
 川上先生。
 はしたない声あげながら……。
 こんなに乳首、おっ起てて。
 やっぱり、お好きなんでしょ?
 乱暴に扱われるのが」
「ち、違います!」
「違わないわよ!」

 乳首を指してた指が翻ると、手の平となって戻った。
 大きな肉音が立った。
 手の平が、したたかに乳房を打ったのだ。
 縄に戒められた乳房が、肉のボールのように弾んだ。
 乳房には、みるみる赤い指跡が浮き上がった。

「助けてぇ。
 誰か、助けてぇぇぇぇ」

 川上先生の声が、狂ったリボンのように宙を駆けまわる。

「あらあら。
 先生が、はしたない声あげるから……。
 お目覚めのようだわ」

 畳に突っ伏してた理事長が、顔を持ち上げてた。


 まだ半分夢の中みたいで、視線が壁際を這ってる。
 川上先生には、まったく気づいてない。

「川上先生。
 心強いでしょ。
 ここには、お仲間がいたのよ」

 床の理事長を隠す形で立ってたあけみ先生が、ゆっくりと身を移した。
 川上先生から理事長まで、視界が開けた。
 川上先生の目蓋が、大きく開いた。

「さすがだわ。
 背中を見ただけで、誰だかわかったみたいね。
 ま、こんな素晴らしい裸の持ち主は、そうそういないけど。
 でも、それって……。
 その裸が誰のものか、知ってるってことよね」

 川上先生は唇を震わせながら、身をうねらせた。
 開脚したまま吊られたマリオネットみたいだった。

「理事長。
 お尻向けてないで、こちらをご覧になって」

 あけみ先生は、理事長の傍らに歩み寄ると、床に蟠る縄を拾いあげた。
 理事長の背中から伸びる縄だった。
 あけみ先生が、指揮者みたいなモーションで縄を振り上げた。
 縄は、生を得たように一直線に伸びた。

「でも、ほんと可愛いお尻ね。
 こんなお尻抱えながら腰振れる男は、幸せものだわ。
 でも……。
 ほんとにそんな男、1人でもいたのかしら?
 だって、レズビアンなんですものね。
 理事長先生」

 背中の縄を引っ張られた理事長は、全身を揉むように蠢いた。
 起ちあがろうとしてかなわず、再び畳に突っ伏す。

「あらあら。
 スゴい格好。
 理事長。
 お尻の穴まで見えてますよ。
 美里、そこの縄束持ってきて。
 本格的に目を覚ましそうだから」

 あけみ先生の指先は、カメラの載った机の下を指してた。
 そこには、飴色の縄の束が、いく巻もうずくまってた。
 4本の机の脚に囲まれた縄は、まるで檻の中の蛇のように見えた。

「早く!」

 わたしは、恐る恐る檻に手を差しこみ、縄束を拾いあげた。

「1本は、その机の脚に結んで。
 お団子結びでいいから。
 そうそう。
 そしたら、そのまま引っ張って、こっち来て。
 あと、もう1本は束のまま持って来て」

 あけみ先生は、わたしから縄の一端を受け取ると……。
 突っ伏した理事長の左足首を括り上げた。
 もう1本の縄で右足首を縛り、そのままウィンチの載る作業台まで後退る。
 理事長の頭が、持ち上がった。

「お目覚めですか、理事長。
 でも、寝相が悪いですわね。
 朝は、きちんと仰向けでむかえましょう」

 あけみ先生は、持ってた縄を、大きく引っ張った。
 縄は一瞬にして張り詰めると、理事長の右足が持ちあがる。

「ほら、美里。
 掛け声。
 何て言うんだっけ?
 綱引きのとき。
 あ、そうそう。
 これだ。
 オーエス、オーエス」

 あけみ先生は、両手を交互に移し変えて、縄を手繰り寄せた。
 先生は、うつ伏せた理事長の左側に立ち、理事長の右足を引っ張ってる。
 理事長の左足は逆に、右手にある机に縛られてる。
 起こる事態はひとつ。
 理事長の身体は畳の上で裏返り、仰向けになった。
 でも、あけみ先生は、綱引きを止めようとしなかった。
 理事長の両脚が開いてく。

「オーエス、オーエス」
「い、ぃぃぃ」
「どうしました、理事長?」
「い、痛いぃ」
「そんなはずありませんでしょ。
 その柔らかい身体なら、180度開脚も出来るはずよ。
 ほら、もっと頑張って」

 あけみ先生は、床にお尻を落とした。
 両脚で床を蹴りながら後退る。
 踵が床で空転するようになると、ボートを漕ぐように上体を反らせた。

「あぎぃ。
 痛い痛い痛い」

 理事長の悲鳴を聞いても、あけみ先生は縄を緩めようとしなかった。
 改めてあけみ先生を見ると、すごい格好だった。
 床にお尻を落とし、両脚は床に踏ん張って、目一杯開脚してる。
 下半身を覆うものは、何ひとつ無い。
 陰毛さえも。
 つまり、股間は丸見え。
 陰唇が、おちょぼ口みたいに開いてた。
 先生は、その格好のままお尻を送り、ウィンチの載る机脇まで移動した。
 引き絞ってた縄を、机の脚に巻きつける。
 縄は、蛇のように机の脚を括りあげた。
 縄目を結ぶと、先生はゆっくりと起ちあがる。

「最後、ちょっと緩んじゃったけど……。
 ま、こんなものね。
 ほら、美里。
 こっち来てごらん。
 すごい格好だから」

 先生の招く手に吸い寄せられるように、わたしは立ち位置を移した。
 先生の傍らに立つと、理事長の大きく開いた股間が、イヤでも目に入った。

 いいえ。
 イヤでもってのは、ウソよね。
 見たかったから、自分で動いたの。
 仰ぎ見る存在でしかなかった理事長が……。
 無残に股間まで晒してる。
 その恥ずかしい姿を……。
 理事長の生殖器を、見たくてしょうがないわたしがいた。

「でもほんと、素晴らしい体型よね。
 筋肉質の身体って、無理な姿勢を取らせるほど、美しさが際立つみたい。
 ほら、この太腿の張り」

 理事長の太腿には、大きな筋肉のはざまに、渓谷みたいな翳が走ってた。

「そうそう。
 この姿、川上先生にも見てもらいましょう」

 あけみ先生は数歩後ずさり、川上先生の視線を迎えた。
 わたしも、反対側に身を退けた。
 川上先生から理事長まで、モーゼの海のように視界が開けた。

「ほら。
 よく見なさいよ。
 何でさっきから黙ったままなの?
 顔、こっちに向けなさいって。
 どうしたの?
 恥ずかしいの?
 そんな格好、見られるのが」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


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