放課後の向うがわⅡ-25


「か。
 かはぁ」

 すべての精液を放出したわたしは……。
 石炭を食い尽くした機関車みたいに、動きを止める。
 尻たぶだけが、ひくひくと収縮してる。
 きっと、顎は外れたようにぶら下がり……。
 唇の端からは、涎を垂らし……。
 瞳は半分、上瞼に隠れてる。
 断崖に爪先立って、懸命に意識だけは保ってる。

「あぅぅ」

 川上先生が、身をくねらせた。
 骨のないゴム人形みたい。
 女の身体って、どうしてこう柔らかいのかしら。
 でも弾みで、わたしの姿勢は、危うい均衡を失った。
 その場にひっくり返りそうになり、無意識に脚を送った。

「あぁっ」

 陰茎が抜けた。
 川上先生の声は、明らかに喪失の悲鳴を含んでた。
 たたらを踏む足元を、懸命に踏ん張る。
 陰茎はまだ硬度を失わず、先生の膣液に塗れたまま、ネラネラと光ってる。
 射出口には、名残の精液が、珠のような雫を結んでる。
 わたしは、陰茎の基部を握ると、切っ先に向けて扱きあげる。
 指の股に絡め取った精液を、鼻先に翳す。
 クラクラするほど臭い。
 初夏の森に迷いこんだような匂い。

「先生……。
 最高でしたわ。
 でも……。
 絶対、妊娠しちゃったと思う。
 すっごく濃いもの。
 感じたでしょ?
 子宮口に。
 どうです?
 ご気分は?
 女の胤で、子供を宿すお気持ちは?」
「い、いや……。
 いやです」

 川上先生のおまんこが収縮した。
 酢を垂らされたアワビみたい。
 肛門まで、シャッターのように絞られてる。
 懸命に、精液を押し出そうとしてるの。

「あ、垂れてきた垂れてきた。
 先生、椅子降りて。
 座面が汚れちゃう」

 背中の縄を引っ張って、先生を引きずり下ろす。

「ほんとにイヤらしいお尻。
 また突っこみたくなるわ。
 先生、待ってくださいね。
 垂らさないでちょうだいよ。
 今、バケツ持ってきますから」

 掃除用のバケツを拾い、先生の足元に据える。


「ほら、いいですよ。
 息んで。
 お腹押してあげましょうか?」

 先生の股間で、アワビが収縮する。

「スゴい締めつけ。
 こんなに締められたら、どんな男だって我慢出来ないわ。
 でも、出ないわね。
 わたしの、よっぽど濃かったのかしら?
 先生。
 やっぱり、妊娠、決まりみたいですわ」
「い、いやぁ」

 先生が顔を歪めると、なんと、股間のアワビが泣き出した。
 おしっこ、し始めたのよ。
 押し出せないなら、水で流そうってわけ?
 おしっこで膣内なんて、洗えないのにね。

「終わりました?
 少しは流れたかしら?」

 わたしはバケツを覗きこむ。
 ブリキの底には、うっすらとレモン色に色づいた液体が溜まってる。

「精液、出てないみたいですよ」

 顔を近づけると、メガネが曇った。
 それで一気に、興奮が昂まる。
 バケツに顔ごと突っこみ、濃厚な蒸気を堪能する。

「あー、いい香り。
 でも、精液が混じってるか、嗅いだだけじゃわからないわ。
 味見してみないと。
 先生、飲んでみていいですか?」
「ダメ!
 止めてください。
 汚い」
「あら、教師にあるまじき不見識ね。
 出たばかりのおしっこって、無菌なんですよ。
 綺麗なものなの。
 飲んでも、ぜんぜん平気。
 でも、飲む前にまず……。
 顔、洗わせていただきますわ」

 わたしは、バケツの底を両手で掬う。
 薄黄色い水を透いて、指の腹は、並んで泳ぐ小魚みたい。

「先生、こっち見て」

 わたしは、両手を抜きあげ、そのまま顔に叩きつける。
 弾けた飛沫が、耳の穴に入った。
 わたしは、手の平で顔を捏ね回す。
 唇を伝う雫は、啜りこむ。

「美味しいー。
 匂いも最高」

 指先に纏わる滴りを、鼻の穴に突きこむ。

「止めて、止めてぇぇぇ」
「止められるもんですか」

 わたしは、バケツを頭上に掲げると、水垢離をするように、ひっくり返す。
 生温い滝が、頭上から降り注ぐ。
 バケツを床に戻すと、両手で髪を掻き回す。
 流れる雫を、全身に塗りたくる

「もう、止めて……」

 脇の下に塗りこむと、鼻先を突っこむ。
 発汗した脇の臭いと、雌の小便の臭い。
 どんなチーズも敵わない、至高の香り。
 下腹部に滴る小便を、陰茎に塗りたくる。

「先生……。
 わたし、また勃っちゃいました。
 いいですか?
 もう一発。
 ほら、お尻あげて」

 ビシィッ。
 尻肉が、小気味いい音を立てる。
 尻たぶがほんのりと染まっていく。
 先生のお尻が、ゆっくりと上がる。
 相臀のあわいから、生々しいアワビが覗く。

 わたしの陰茎は、舌なめずりするヘビのように近づいてく。

「はは。
 まーた、脱線しちゃったわね。
 何の話してたんだっけ。
 あ、そうそう。
 この塔への鍵の話よね。
 川上先生が持ってた、革のストラップが付いた鍵。
 それを見かけたのが、更衣室だったってとこまで話して……。
 話が逸れちゃったのよね。

 それじゃ、その続きから。
 ロッカーの扉の裏に付いた鏡で、後ろが見える。
 通路を挟んだ反対側の川上先生が、ローッカーを開けてると……。
 その中が見えるわけよ。
 革のストラップが付いた鍵がぶら下がってるのも見えた。
 何の鍵だろうって、不思議に思ってた。
 朝、その鍵を持って出ないから、机の鍵でもない。

 でも、謎は、偶然にも解けたわけよ。
 その鍵で川上先生が、塔への扉を開くのを見ちゃったんだから。
 川上先生が、扉の前で後ろを振り返ったときの目。
 きっと、あの目に出会った瞬間よ。
 わたしの心に、悪魔が宿ったのは。
 怯えたような、でも、期待に膨らんでるみたいな……。
 葡萄を思わせる眼だった。
 わたしの好きな、大手拓次って詩人に、『藍色の蟇』って詩があるわ。
 その中の一節が、脳裏に蘇った。

『太陽の隠し子のやうにひよわの少年は
 美しい葡萄のやうな眼をもつて、
 行くよ、行くよ、いさましげに』

 そう。
 その時の川上先生の目は……。
 まさに、少年の目だった。
 でも、健康な目じゃない。
 病床の布団の中で、熱に浮かされてるひよわな少年。
 でも、彼の意識は、想像の森を歩いてるの。
 “いさましげに”よ。
 はは。
 また脱線した。
 でも、それくらい印象的な目だった。
 わたしの心臓を、鷲掴みするくらいね。

 で、先生の手から下がる革製のストラップが、塔への扉を開くのを見たとき……。
 わたしの肩越しに、悪魔がささやいた。
 お前は、オールマイティのカードを持っているんだぞ、って。
 そうよ。
 あのロッカーのマスターキー。
 それまでのわたしは……。
 あのキーを悪用しようなんてこと、これっぽっちも考えたことが無かった。
 これは本当よ。
 きっと、教師という立場が、無意識のブレーキを掛けてたのね。
 でも、悪魔の声を聞いた瞬間……。
 ブレーキが外れた。

 以来、マスターキーを常にポケットに入れ、チャンスを待ったわ。
 その機会は、案外早く訪れた。
 川上先生が、年休を取ったの。
 わたしは、人気のない時間を見計らい、更衣室に向かった。
 他人のロッカーに鍵を挿しこむときは……。
 さすがにドキドキしたわね。
 でも、あっけないほど簡単に、扉は開いた。
 当たり前だけど。

 ロッカーの中には……。
 川上先生の匂いが、かすかに籠ってるようだった。
 思わずオナニーしそうになったけど……。
 さすがに、そこは持ちこたえた。
 目的は、そんなことじゃないものね。
 そう。
 目あての物は、まさしく目の前にぶら下がってた。
 革のストラップの付いた鍵。
 それを持ち出すと、昼休みに街に出て……。
 合鍵を作った。
 もちろん、先生の鍵は、そのままロッカーに戻した。
 こうして、オールマイティなマスターキー君のおかげで……。
 わたしの手元には、大変な鍵が手に入ったわけよ。
 そう。
 “禁区”と呼ばれる、この塔への扉。

 でもね。
 なかなか勇気が出なかった。
 あの扉を開く勇気が。
 塔の中に、誰がいるかもわからないし。
 もし、わたしが塔に入ってるところを見咎められたら……。
 言い訳のしようが無いじゃない?
 どうしてここに入れたんだって、問い詰められるわ。
 いろいろ口実を考えたけど……。
 やっぱり、一人で入るのは危険だって結論しか出なかった。
 それなら、どうするか。
 川上先生に続いて入るしか無いじゃない。
 川上先生が、塔に入るところを目撃し……。
 不思議に思い、後を追った。
 これなら理由になるでしょ?
 もちろん川上先生は、入った後、扉をロックしたって反論するでしょうけど。
 でも、鍵なんて掛かってなかったって言い張れば……。
 結局は、川上先生の掛け忘れってことに帰着するはずよ。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


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