放課後の向うがわⅡ-41


 床に仰向いた理事長の真上に、川上先生がぶら下がってた。

「暑っつ。
 美里、タオル取って。
 ほら、その柱に下がってるでしょ。
 バスタオル」

 畳の脇の太い柱には、手を横に伸ばせば取れる位置に、白いバスタオルが下がってた。
 タオルは、柱に付いた大きなフックに掛かってるようだった。

「うわっ」

 何の気なしにタオルを外したわたしは、その場で飛び退った。

「はっはっは。
 大成功。
 いいリアクションしてくれるわね」

 わたしが驚いたのは、タオルの方じゃなく……。
 タオルが掛ってたフックだった。
 柱からは、水平に男性器が突き出してたの。
 さっきのあけみ先生の話で……。
 理事長と川上先生が舐めてたというディルドゥに違いなかった。

「どう?
 試してみる?
 そいつにバージン捧げるってのも、ひとつの青春よ。
 ははは。
 冗談だって。
 タオル、持ってきて。
 ありがと」

 あけみ先生は、形ばかりの仕草で顔を拭くと、タオルを放り捨てた。
 そんなに汗なんて掻いてなかったみたい。
 タオルは、わたしを驚かせたくて外させたんだろう。
 そうとうテンションが上ってるようだ。
 むしろ、拭かなきゃダメなのは、股間の方だった。
 内腿には幾筋もの雫が伸びて、光を映すほど光ってた。

「お2人さん。
 ご対面ですよ。
 あらあら、まだ寝てる気?」

 理事長は、上体だけ縛られたまま、畳に仰向いてる。
 その上に被さるように、川上先生が吊られてた。
 川上先生の姿は、あられもなかった。
 戒められた両脚が、これ以上無いほどに開かれ……。
 股間を隠すものは何もない。
 しかも、その股間から会陰にかけては、明らかに濡れ光ってた。
 上下から縄で潰された乳房は下を向き……。
 乳首が、真下の理事長を指して突き出てる。
 その2人を、柱の男根がじっと見つめてた。
 一つ目の穴から、今にも精液が噴き出しそうだった。

「さてと。
 舞台は整ったと云うのに……。
 女優さん方は、いつまで寝てる気かしら。
 理事長先生、起きてください。
 もう、幕が上がってますわよ」

 あけみ先生は、理事長の腕を爪先でつついた。
 理事長の首が揺れ、うっすらと目蓋が開いた。
 瞳はまだ、夢の中に溺れてるようだった。

「やっとお目覚め?
 お望みどおり、2人一緒にしてあげましたよ。
 川上先生も、いつまで寝てるつもり?
 起きて」

 あけみ先生は、川上先生の肩を小さく突いた。
 川上先生の身体が、わずかに揺れる。
 目覚めをむずかるように、縄が軋んだ。
 川上先生の眉根に皺が寄った。
 意識が戻りつつあるようだ。

「むぅん」

 先に覚醒したのは、理事長だった。
 彷徨ってた瞳が、真上で焦点を結んだ。
 むろん、瞳が捉えたのは、自分に被さるように吊られた川上先生だった。

「ゆうちゃん……」

 その声が聞こえたのか、続いて川上先生も目を覚ました。
 理事長を呆然と見下ろしてた瞳に、生気が戻った。

「理事長先生」
「大丈夫?、ゆうちゃん」

 川上先生の顔が歪んだ。
 下を向いた瞳から、雨だれのように涙が零れた。
 涙の粒は、理事長の額にぼたぼたと降り注いだ。

「あら。
 いきなり愁嘆場なの?
 そういうの、好きじゃないのよね。
 どう?
 ご気分は。
 お望みどおり、2人一緒にしてさしあげましたのよ」
「岩城先生、もう許して。
 お願い」
「ダメー」
「川上先生だけでも、助けてあげて」
「いえ。
 岩城先生、お願いします。
 理事長先生の縄を解いて」
「うらやましいわね。
 仲がおよろしくて。
 理事長。
 お言葉どおり、2人一緒にしてあげたんだから……。
 女王さまを呼んでちょうだい。
 どうやったら来てくれるの?」
「わからないのよ。
 ほんとなの。
 突然現れるの。
 塔の鍵も持ってないのに。
 廊下に足音もせず、扉が開く音も聞こえない。
 なのに、この部屋に突然降り立つの」
「呆れた。
 それじゃ、ルルドのマリアさまじゃないの。
 2人のベルナデッタの前に、ご降臨されるって云うわけ?
 まるっきり宗教だわ。
 エロ宗教ね。
 そうか。
 2人一緒でも、サカってなきゃダメなのか。
 でも、残念ながら……。
 これ以上、2人は近づけないのよ。
 川上先生の縄、いっぱいいっぱいだし」
「だから解いて」
「バカ言うんじゃないわよ。
 解いてあげたら……。
 わたしの前で、レズビアンショーでも見せてくれるって言うの?
 なわけないでしょ。
 そうだ。
 直接は、触れなくても……。
 繋げてあげることは、出来るわ。
 美里。
 机のとこ行って。
 さっき、バイブの入ってた引き出し」

 机の方に身体を向けるとき、脚がもつれてよろけた。
 自分の脚みたいじゃなかった。
 夢の中の、ふわふわした地面を踏んでる感じ。

「ちょっと、美里、大丈夫?
 酔っぱらいみたいよ。
 場の空気に酔ったのかしらね。
 この2人の噴きあげるエロ蒸気が、空中で醸されたのかも?
 そうそう、その引き出し。
 開けてみて。
 クリップが入ってるでしょ。
 銀色のチェーンが付いてるやつ。
 そう、それ。
 あるだけ持ってきて。
 絡ませないようにね」

 大小さまざまなクリップが、チェーンで繋がってた。
 手の平に冷たい鎖を載せ、先生のところまで運ぶ。
 もちろん、こんなことするの初めてなはずなのに……。
 なぜだか、こういうことを幾度も繰り返してきた気がした。
 ひょっとしてわたしは……。
 どこか遠い古代の国で、こんな仕事に仕える小間使いだったのかも知れない。

「じゃ、その大きいやつを渡して。
 あとのは、そのまま持ってるのよ」

 先生は、クリップの片方を摘み、空中に吊るした。
 真下に伸びる細いチェーンの先には、もうひとつクリップが付いてる。

「これ、何に使うものだと思う?
 ふふ。
 これはね、女と女の命を繋ぐ道具。
 2人の体温がクリップを温め……。
 チェーンを渡って繋がるの。
 それじゃ……。
 どことどこを繋げてあげましょうか?
 お好きなところをおっしゃって。
 理事長先生」
「お願い、もう助けて」
「女王さまが来たら、助けてくださるわよ。
 早く来てくれるといいわね」
「あの方が来たら、あなたなんてやっつけられるんだから」
「ふふ。
 そんな筋書きじゃ、面白みに欠けるわね。
 やっぱり、どんでん返しが無いと。
 ちょっとだけ教えましょうか。
 このシーンの結末。
 突然現れた女王さまは……。
 そこで、昔の恋人と出会うのよ。
 わかる?
 それが、わたし。
 わたしとあの女王さまは、高校生のころからの恋人なの」
「嘘よ。
 そんなの、嘘だわ」

「ウソかどうかは、そのときのお楽しみね。
 ほら、早く呼びなさいよ。
 もたもたしてると……。
 わたし、責め殺しちゃうかも。
 大小便垂れ流して、骸になってからじゃ遅いでしょ。
 ほら、早くってば」
「助けて!
 お姉さま、助けて!」
「ほっほっほ。
 ほんとに呼んだわ。
 バカじゃないの?
 でも、そんなオバカな理事長って、嫌いじゃありませんわ。
 とーっても、可愛い。
 可愛すぎるから……。
 乳首、挟んであげる」
「ぎひぃ。
 痛い痛い痛い。
 痛いぃぃぃ」
「やかましい人ね」
「理事長先生!
 大丈夫ですか?
 岩城先生、外してあげて!
 お願い」
「まぁ、妬けちゃうわ。
 じゃ、川上先生が身代わりになってくださる?」
「代わります。
 だから、理事長先生を助けて」
「素晴らしい。
 わが校の校訓、“愛他の心”そのものだわ。
 まさに、教師の鏡。
 それじゃ、お望みどおり……。
 挟んであげるわね。
 理事長とおんなじとこ。
 ほら」
「あぎ」
「ちょっと、そんなにロープ揺らさないで。
 切れちゃうでしょ。
 どう、ご気分は?」
「い、痛いぃ」
「外してほしい?
 じゃ、おっしゃい。
 理事長のはそのままにして、自分のだけ外してくださいって」
「いやです。
 理事長先生のを外して」
「まぁ、ご立派。
 理事長先生、お聞きになりました?
 校訓の真髄、ここにあり!」
「ゆうちゃん!
 大丈夫?、ゆうちゃん。
 お願い、ゆうちゃんだけは助けて」
「でもわたし……。
 こういうの、嫌いなんだなぁ。
 お互いにかばい合うっての。
 化けの皮、剥がしてやりたくなっちゃう」
「ゆうちゃん、痛い?」
「だ、大丈夫です。
 わたしは大丈夫」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


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