地味なふたり

三番線のホームの前の方、上り電車を待つ間。肩から掛けている飴色のバックが小さく振るえだした。
夕刻少し前のなんともない時間、頭上のオレンジ色の空の中を白い飛行船がゆったりと旋回し目の前を黄色いのカタマリが滑り込む。
カーキのマフラーと黒のコートのバランスを気にしながら小さく震えだしたカバンを無視して車内へと足を運ぶ。淡い色の西日が差し込む車内はエアコンと乗客の体温が混じり合いほんのりとあたたかく、今はまだ一月だなんて事を一瞬忘れさせてしまう。携帯をいじる女子高生とA4サイズの茶封筒を持った容姿端麗な学生の間へと腰をおちつけ、ぼんやりと通りすぎていく景色を眺めふと思う。目の前に入ってくるビルやその屋上や茶色い屋根、緑色の非常階段、見えてくるモノは建物たちの上の方、寂しいくらいに上の方で、思い入れのない駅は何事もなかったかのように私を無視していく、と。
落下する夕方、高架の上を走るこの黄色のカタマリ、赤い色の思考回路。色んな物を忘れてしまったのか、それとも置いてきてしまったのかはまだ分からない。でも六番線のホームに降り立った時にはなくしたものがひとつだけ分かった。
飴色のバックが小さく震えだす事はもうないって。
あたしを追い越していくイエローサブマリンが目の前の女子高生のスカートをひらつかせる、六番線のホーム。

な?言っただろ。

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