放課後のむこうがわ 20


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放課後のむこうがわ 20

「姉妹で、同じ名前のわけないでしょ?
 もちろん、親子でもね。
 それならもう、答えはひとつよね。
 あのあけみは……。
 わたしなの」
「そんな……」
「まだ、信じられない?
 それじゃ……。
 これを見たら、どうかしら」

 先生は、教室の隅に据えられた教卓に身を移した。
 スーツのポケットから鍵を取り出すと、引き出しを開けた。
 引き出しから出てきたのは、木製の箱だった。
 先生は少しおどけた仕草で、小箱を捧げ持っちながら戻った。
 ピアノの上に、小箱をそっと載せると、蓋を開いた。

「これ、あなたに返すわね」

 先生の華奢な指が、箱から布地のようなものを摘みあげた。
 わたしの目の前に、布地がぶら下げられた。

「見覚えあるでしょ?」

 先生の指先が開き、布地がわたしの膝に落下した。
 わたしの身体は、爆弾を渡されたように跳ねあがった。
 布地は、スカートの上で丸まってた。
 広げるまでもなく……。
 それが何なのかわかった。
 あの校舎に、わたしが置いてきたショーツ。
 でも、鮮やかなレモンイエローだったショーツは……。
 すっかり色がさめてた。

「ふふ。
 あれから……。
 14年経つのよ
 ほんとに長かった。

 棚橋さん。
 わたしの話、聞いてもらえるかしら?」

 先生はグランドピアノに片手を掛け、窓の外を遠い目で見ながら、話し始めた。

「わたしも、この学園の卒業生なの。
 入学したのは、14年前。
 この鉄筋校舎に建て替えられる前の、最後の世代ね。
 わたしは、あの木造校舎が大好きでね。
 思い出すのよ。
 小学校の校舎を。
 うちの家庭は、ちょっといろいろあって……。
 小学校のころ、田舎のおばあちゃんに預けられてたの。
 小学校も、そこで通った。
 木造校舎でね。
 裏がすぐ山だった。
 放課後は、その山の中を、薄暗くなるまで友達と駆けまわったものよ。

 でも、中学に入ると親に引き取られて……。
 神戸に移った。
 田舎に帰りたくてしょうがなかった。
 両親とも馴染めなかったし。
 親も、好きで引き取ったんじゃないって態度、隠そうともしなかったから。

 で、中学終えたら、家を出て働きたかったんだけど……。
 見栄っ張りの両親は、そんなこと許してくれそうもなかった。
 そんなとき……。
 歯医者さんの待合室で手に取った雑誌に、この学校のことが載ってたの。
 写ってる木造校舎に、ひと目で引きつけられた。
 でも、写真の説明書きには、その校舎は近々取り壊されるって書いてあった。
 同じ兵庫県の学校だし、壊される前に見に行こうと思った。
 で、記事を詳しく読んでみたら……。
 その学校が全寮制だってことがわかったの。
 校舎が壊されるのは、翌年の夏休み。
 入学すれば、一学期だけだけど、この木造校舎に通える。
 もう、迷いは無かった。

 歯医者さんの受付で、雑誌を貸してもらえないかって頼むと……。
 次月号がもう出るから、差し上げますよって。
 その夜、思い切って両親に相談した。
 雑誌を見せたら、両親はあっさりと認めてくれたのよ。
 その学校が、偏差値の高いお嬢様学校だってことは……。
 後からわかった。
 ここなら、両親の見栄も満足できたってわけね。
 おかげで、試験勉強には苦労させられたけど。

 入学したときにはもう、この鉄筋校舎が出来てたわ。
 授業なんかは、こっちで行われたの。
 でも、木造校舎は残ってたのよ。
 母親も卒業生だって子が言うには……。
 OGから、取り壊し反対の声があがってたんですって。
 思い出の校舎なんだから、当然よね。
 でも、グランドが狭くて、とてもここでの存続は無理だった。
 移築話も、いくつか持ち上がったみたいだけど……。
 まとまらなかったみたい。
 で、結局……。
 夏休み前の創立記念日に、旧校舎への感謝祭を行った後……。
 取り壊されることになったの。
 それまでは、OGたちが名残を惜しむ期間にしたわけ。
 で、使われない教卓にも、毎朝花が飾られ……。
 黒板の文字も、そのままにされてた。
 別れを告げに来るOGのためにね。

 旧校舎への生徒の立ち入りは、いちおう禁止されてたけど……。
 特に、バリケードとかしてあったわけじゃないしね。
 普通に入れたわ。
 やっと再会できた木造校舎と、すぐにお別れになるんですもの。
 残りの時間を噛み締めるみたいに、何度も足を運んだわ。

 そんなときよ。
 ともみさんと出会ったのは。
 彼女は、わたしと会うなり、鞄からロープを取り出したの。
 『お待たせ』って言ってね。
 わけがわからないままに、わたしはうなずいてた。

あとは、あなたの見たとおり。
 放課後の校舎には、訪ねてくるOGもいなかった。
 その校舎で……。
 幾度も逢瀬を重ねた。
 逢瀬の度にともみさんに縛られた。

 ともみさんには、何度も尋ねたわ。
 どこの学校?、って。
 近くでは見かけない制服だったからね。
 でも、彼女は答えてくれなかった。
 しつこく聞いたときには、猿轡を噛まされることもあった。

 そんな2人の逢瀬の日々は、創立記念日を境に断ち切られた。
 旧校舎への感謝祭が行われた翌日、もう校舎はバリケードで囲まれてたの。
 分厚い鉄板みたいな壁で覆われて、どこからも入りこめなかった。

 ともみさんとの連絡手段を持ってないことに、改めて気づいた。
 無理に聞くと、2人の世界が壊れるような気がして、ずっと聞けないでいた。
 今さらながら後悔したけど、ほんとにもう、後の祭りってこと。
 あの制服が、どこの学校なのか……。
 京都や大阪まで調べた。
 でも、どこにも無かったの。

 やがて旧校舎の跡地は整地され、テニスコートになった。
 もちろん、ともみさんは帰って来なかった。
 でも、ともみさんのことを、どうしても忘れられなかったの。
 卒業して、大学に進んでからもね。

 で、この学校にいさえすれば、いつかともみさんが訪ねて来るんじゃないかって思った。
 ともみさんとわたしを繋いでるのは、この学校しかないんだからね。
 教職の資格を取ると、わたしはこの学校に戻って来た。

 この学校の音楽教師になって、もう8年になるわ。
 でもともみさんは、一度も訪ねて来てはくれなかった。
 ともみさんは……。
 わたしの胸の中にだけ棲んでるんだって、近頃やっと思えるようになった。

 そんなときよ。
 転校して来たあなたに出会ったのは。
 背筋が凍るようだった。
 あの時……。
 あの校舎に一緒にいた子だって、ひと目でわかった。

 でも……。
 そんなことあるわけないのよね。
 あれから、14年も経つんだから。
 あの時の子が、同じ姿のまま現れるなんて、ぜったいにあり得ない。
 他人の空似だって……。
 自分に言い聞かせた。

 でも、そうじゃないってことが、つい最近わかったのよ。
 うちの学校ね、来年度から制服がリニューアルされることになったの。
 まだ、生徒には告知されてないけどね。
 こないだ、新しいデザインが、教師にだけ披露された。
 息が止まったわ。
 新しいスカートは……。
 グリーンとネイビーのタータンチェック。
 そう。
 手触りも全く同じ。
 ともみさんが履いてたスカートよ。

 わかったでしょ?
 つまりともみさんは、これから入学してくるのよ。
 この学校にね。
 でも、残念ながら……。
 もうちょっと先かな。
 だって、ともみさんはあなたのこと、知らなかったもの。
 あなたもそうだったでしょ?
 たぶんともみさんの入学は、あなたが卒業した後ね。

 ふふ。
 信じられない?
 でも、間違いないことなの。
 やっと理解できたのよ。
 ずっと不思議に思ってたことがね。
 高校生のともみさんが……。
 どうして、あんなに上手に縄を使えたのかってこと。
 あれはね……。
 わたしが教えるからよ。
 そう、これから……。
 みっちりとね。」

 そう言って、あけみ先生は……。
 スカートを両手で摘み、裾を吊りあげていった。
 ストッキングは、太ももで途切れてた。
 ガーターベルトの無い、オーバーニーストッキング。
 やがてスカートの裾が、股間を越えた。
 そこには、あるべきものが無かった。
 先生は、ショーツを穿いてなかったの。
 剥き出しになった下腹部には、黒い翳りも無かった。
 陰毛が、痛々しいまでに剃り上げられてたわ。
 先生はスカートを、おヘソの上まで捲りあげた。
 股間を中心とした腰回りが、すべて曝された。
 先生が言った「わたしが教えたの」って意味は、すぐにわかった。
 先生の股間には、二重に回された縄が、T字型に喰い込んでたの。
 性器にあたる部分には、大きな結び目が作られてた。
 縄の脇から捲れ出たラビアが、その結び目を咥えてた。
 そう。
 まるで……。
 傷口に盛り上がる……。
 樹木の……。
 肉瘤のように。

おわり

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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