食虫花 ~美少女・内山遙~3

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第三話【目撃者】

その日、遙は、バレーボール部の土曜部活で登校していた。
部活と言っても万年予選、しかも一回戦敗退の弱小バレー部の事。平日、体育館は他の強豪部で占められ、なかなか使わせてもらえない。グランドでは、さらに肩身の狭い部活を強いられる。だから土曜日しか、ネットを張った本格的な練習は出来なかった。
ただそれも、差し迫った試合など無い限り、気の合った有志数人が集まり、好き勝手に自主練習する程度。顧問も体育館の使用許可を取っている手前、練習始めには顔を出すが、そのうち居なくなっているといった、いい加減なものであった。
こんな調子だから、部室は与えられていない。着替えには普段使っている女子更衣室を利用する。
したがって、そんな事情を知らない林田が、遙らの休日練習など気にも留めず、無警戒に、更衣室に設置した盗撮カメラのメンテナンスしていたのも、無理からぬ事と言えた。廊下の先に、教え子の姿を見た時は、さぞ驚いたことだろう。

もちろん一方の遙にとっても、突然の担任教師の登場は、予期せぬものであった。そして同時に、不快なものであったに違いない。地味な風貌と退屈な授業。その為、生徒には不人気であった。それとは別に、林田が生徒、特に女子から忌み嫌われているのには、理由がある。いわいるセクハラ教師だった。何かと理由をつけては、女生徒の身体を触ろうとする。そればかりでない。彼女は中学校時代の友人から、彼の前任校での不埒を聞いていた。
この男、教え子への猥褻行為が問題となったという。遙はそれを、クラスメイト達に報告していた。いや、それでも彼女の伝え聞いた話は、かなり薄められた内容となっていたようだ。実際の関係は、遥らが思いも及ばないほど、陰惨なものであった。

その犠牲者は、当時、入学したばかりの女生徒だった。希望に満ちた、楽しい高校生活を思い描いていた事であろう。見た目に、大人しい少女であった。遙とは同期にあたる。
新しい環境に入り間もなく、担任教師がもたらした突然の凶事。友達が出来る前であったし、片親である母は昼夜無く働いており、娘とのコミュニケーションが不十分だった。その為に、誰に相談する事も出来ず、林田の辱めにじっと耐え続ける他ない。

悲運にも、彼女は被害生徒の中で歴代最年少だった。三年という在校期間、わずかな差であっても、その若さは中年教師を魅了する。つい夢中になり、毎日放課後に生徒指導室へ呼びつけては淫らな行為に及んだ。他の生徒が、そういった特別な関係に気づかぬはずがないではないか。
程なく二人の関係は、少年少女達の好奇心をそそる、格好のスキャンダルとして広まる。「教室から喘ぎ声が聞こえた」だの「ゴミ箱にコンドームが捨ててあった」「いや、すでに妊娠している」といった話が、無責任に拡散された。やがて、その噂が保護者達の耳に入り、トラブルとなった。昨年秋の事である。

林田は、学校の事情聴取に際し、「行き過ぎた指導があった」の他は、知らぬ存ぜぬを通した。女生徒は、密室での淫行に口を噤み、他に事情を知る者が現れるでもない。
彼はクラス担任を外されたが、それ以上の処分は無かった。とはいえ、その後直ぐに、別の学校へ転任させられるという人事が、暗に事の重大性を示している。男の日頃の行状から、誰もが薄々、「噂に近い真実」を感じ取っていたのだった。

結局、その女生徒も学校に居られなくなり、二年への進級に合わせて転校を余儀なくされたと聞く。
高校生になっての転校は大変だったはず。表向き否定はされたが、やはり噂どおり、如何わしい行為はあったのだろう。だとすれば、あんな冴えない中年男と同意のはずが無い、絶対に無理矢理だったに決まっている。

あまりに憐れであった。遙は、一面識も無い他校の生徒を思いやり、ひどく同情した。一方で、加害教師に対して言い知れぬ怒りを感じたのだった。何故、こんなトンデモ教師が辞めさされずに済んでいるのか、正義感の強い遙には不思議でならない。
所謂、大人の事情であった。

第四話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~2

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第二話【教え子】

遥は、同級生達に混じっても人目を引く、いわゆる美少女であった。林田が、それまで標的にしてきた少女達と違い、性格も明るく闊達だったので、男子に限らず女子からの人気も高い。彼が更衣室を盗撮した映像の一つに、彼女と友人の会話が映り込んでいた。どうやら、大学生と交際しているらしい。今年二年生となったが、確かに周囲の男子生徒では、明らかに不釣合いを思わせる。加えて、幾分身長が高い事もあり、一見して大人びた雰囲気を持つ女生徒であった。
成績は、頑張ればあと一伸び、二伸びあるように思われる。聡明で勘の鋭い生徒でもあったので、この学校に赴任して間もないクラス担任の、歪な色欲を見抜くのも早かった。新学期が始まり、遙らの担任を受け持つ前。欠員が出ていたとは言え、年度替りを待たない不自然な時期の転任に、疑問を持った。どこからか、前の学校での不祥事を聞きつけ、「あのエロ教師には気をつけよう」と、同級生達に警戒を促したのも彼女である。

その結果、次第に担任教師を見る教え子の目が厳しく、冷めたものになっていく。女生徒達は露骨に彼を避け始める。男どもは、それをニヤニヤと傍観した。
その学校で問題を起こしても、次の学校へ転任すれば、それまでの悪行はリセットされる。しかし、今度のクラスはそうはならなかった。これまでとは違う展開。
“仕事”に支障が出る。何より好物の青い果実に、触れる事も許されない。その不測に林田は飢渇、焦燥する。そして原因が遙にあると知り、憤慨し、理不尽にも報復の対象とした。

しかし、男が専らとした孤独な少女達とは違い、彼女の周りには常に友人がひしめいている。親との関係も良好らしい。一度押し倒してしまえば、同様のマインド・コントロールを出来るようにも思えたが、その恵まれた交友関係を考えると、手荒な行動に出るのは慎重にならざるを得なかった。また、獲物となる遙自身が、捕食者の存在に気づき、敵意を以って警戒している中では、罠を仕込み、じっくりと堕とし込んで行く事も、困難に思われる。イライラは募っていった。

彼は“仕事”の成果として、女子更衣室の盗撮画像を自宅に持ち帰り、映った生徒達の着替えを見ながら夢想する。今日はアイツ、明日はコイツといった具合に、教え子達を順番に強姦していくのだ。しばらく味わっていない、少女の未成熟な、まだ硬い果肉を想いながら手淫に耽った。
中でも特に、遙の写った回はご満悦あった。不名誉な“エロ教師”のレッテルを貼り、女生徒との軽いスキンシップも間々ならなくした、林田にとっての害悪。しかし同時に、最高に活きの良い上玉でもあった。喰えばさぞかし旨かろう。是非、味わってみたいものだ。
強烈に狩猟本能を擽り、彼独特の嗜好を刺激する。鼻持ちならない正義を振りかざし、恐れ多くも、教師様に歯向かう女生徒なのだ。きつくお仕置きせねばなるまい。
全裸にした遙を縛り上げ、吊るし、罵倒し、折檻し、凌辱の限りを尽くす。許しを請い、恐怖と羞恥に震えながら、あの教え子はどんな啼き声を聞かせてくれるだろう。大嫌いな教師に屈服させられる、生意気な生徒の無念。それを想像するだけで、歳に似合わぬ大量の白濁を何度も射精した。

もちろん口止めも大切だ。じっくり性奴隷へと調教せねばならない。
芯の強い生徒であるので、心から服従させるにはそれなりに手間は掛かるだろう。だが、その方法を考える作業もまた、この男を興奮させるには充分なものだ。切欠となるような、何か彼女の弱みになる材料が映りこんでいないか。何度も見返しながら、まさに犯罪計画を練るように、丹念にシミュレートするのが楽しみであり、赴任して早々に動きを封じられた、彼なりのウサ晴らしだった。
奴を良く知るまでは焦るな。いずれ仕掛け時はやってくる。その思いがこの学校での彼の犯罪を、いまだ盗撮程度に留めている。荒ぶる淫獣を妄想世界に閉じ込め、さらに踏み込んだ行動を自重させていた。

その盗撮が生徒に、よりによって対象者、内山遙に。
見られた。いや、見られたかもしれない。

第三話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~1

杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、
全13話の長編小説のご投稿がありました。(投稿者 やみげん様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに!

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第一話【生餌】

(見られた…)

そう思った瞬間から、豊かで安定した、そして気ままな生活が、ガラガラと音を立てて崩壊し始める。
男は名前を林田と言った。この学校に勤める中年教師である。

女子更衣室に仕込んだ盗撮カメラ。そのバッテリーを交換する為の休日出勤だった。
土曜日は、補修授業や部活で他の教員がちらほら見える。だから、登校する理由が無い林田が校内をウロウロしても、誰に怪しまれる事はない。そして昼を過ぎる頃には、学校に残る人間は数える程となる。平日や日曜日に比べ、格段に“仕事”を進めやすいと言えた。
彼の“仕事”は盗撮だけではない。痴漢や援助交際、下着ドロもやった。世に言うトンデモ教師として申し分ない犯罪歴。それよりも糾弾されるべきは、教え子を押し倒し、辱め、そして脅かし、あるいは洗脳し、性奴隷とした事だろう。俗悪がそのまま現出したような怪物と言えた。

前に勤務していた学校では、担任教師と女生徒のただならぬ関係に、薄々気づいたクラスメイト達が噂にした。そして、それを聞いた彼らの父兄が、セクハラ教師ではないかと学校に乗り込んだ。
実際は、噂以上に酷い事を彼女に行っていたが、学校側の事情聴取に対し、被害者は、頑なに真実を話そうとしない。いや、あまりの汚辱に話せるはずもなかった。林田の巧みな言い訳もあり、ろくな調査も行われないまま、「誤解を受ける指導があった」と結論する。
そもそも学校は、このテの問題を隠蔽するのが常である。大事は小事に、小事はうやむやに。結局、彼をクラス担任から外しただけの、極めて軽い措置に留めた。だがこれで、疑惑が払拭された訳ではない。最終的に、彼は年度途中での転任となる。
このスキャンダルが原因で、妻とは別居という痛手を負った。しかし、男は反省するふうでもない。むしろ、「これ幸い」と思ったかもしれない。彼は常々、それら愚劣な行状を「仕事のストレス発散」と正当付けていたが、元々そういう資質を持って、あるいはソレ目的で教師と言う職業に就いたのは明らかであった。

季節の変わり目に蜜蜂が次の花畑に移動するごとく、至極当然に、新たな赴任先で少女の甘い蜜を啜る。
前任校で引き起こした問題が、転勤先で“仕事”の差支えにはならない。そういった点でも、学校は猥褻教師にとって真に楽園と呼べる場所だったのだ。
彼は、教室という閉じられた空間で、その統率者の地位を存分に利用した。女生徒達の無知に付け込み洗脳する。彼女らは自身が被害者であり充分に救済されるべき立場である事に気付かない。知らぬ間に歪な淫欲の深みに嵌り、汗や唾液、精液と愛液の滑りの中で、もがき苦しむのだった。

犠牲者の多くは、精神を病み卒業式を迎える事が出来なかった。妊娠し、秘密裏に堕胎させられた少女もいた。最も深刻なケースでは、自ら命を絶つ者まで。林田がその原因であることは、疑いようもなかったが、遺書も無く、誰かに相談した形跡も無かったので、真相は闇の中であった。
無事に卒業出来た者も、深刻なトラウマを抱え苦しむ事になる。先の被害生徒が口を噤んだのと同じ理由、すなわち肉奴隷への調教が、あまりにおぞましい変態行為だった為、この猥褻教師を世に告発する者は現れなかった。もちろん林田が、予めそういった危険の有る女生徒を避け、もっぱら内気であるか、家庭に問題を抱え、他に助けを求められない環境の生餌を狙ったからである。声を出せず、泣き寝入りした少女たちの怨嗟の念が、林田の周囲に漂っていた。

教壇に立ってはならない男。その本性が分かっていたならば、決して採用される事のなかった教師。林田が、今のクラス担任になって目をつけたのが、先程すれ違った女生徒、内山遙だった。

第二話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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