放課後のむこうがわ 2

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放課後のむこうがわ 2

 で、やっぱり……。
 その後の展開が気になるじゃない?
 好奇心が抑えられなくてさ。
 2人の後を追って、校舎の角から覗いてみた。
 でも、もう2人の姿は見えなかった。
 角を曲がりこむと……。
 木造校舎の表側だった。
 生徒玄関みたいな、広い入口が見えた。
 どうやら2人は、そこから中に入ってしまったみたい。
 どうしようかと思ったけど……。
 よく考えたら、遠慮することなんか無いのよね。
 自分の学校なんだからさ。
 もし、見つかって咎められたって……。
 転校したばっかりで迷いました、で済むじゃない。

 入口まで駆け寄ると、そっと中を覗いてみた。
 誰もいなかった。
 ていうか、人の気配がしないの。
 平日の校内とは思えない。
 やっぱりそこは生徒玄関らしくて、大きな木製の下駄箱が並んでた。
 でも、靴が無いのよ。
 古びた内履きは、ところどころに入ってるんだけど……。
 外履きがひとつも無い。
 ってことは、生徒はひとりも中にいないってこと?
 まだ、部活が行われてる時間なのに。
 そこで、ようやく気づいた。
 この校舎は、今は使われて無いんじゃないかって。
 だって、生徒が出入りしている校舎なら、下駄箱が空っぽなんてはず無いんだもの。
 生徒が中にいる区画には、外履き。
 下校した生徒の区画には、内履き。
 どちらかの靴で、下駄箱は満たされてるはず。
 でも、あの2人の靴さえ無いのは不思議よね。
 ここから入ったってのは、思い違いなんだろうか……。

 生徒玄関は、広い廊下に面していた。
 廊下を隔てた正面の窓からは、中庭が見えた。
 樹々が鬱蒼と繁って、ほしいままに枝を伸ばしてる。
 窓から差す光が廊下に落ちて、窓枠の影を映してた。
 廊下は、すっかり色の抜けた飴色。
 床板に凹凸があるのか、そこここに光が浮いてた。
 かすかに、油の匂いがした。

 わたしは、思い切って廊下に上がった。
 内履きのままここまで来ちゃったから……。
 履き替える必要も無いし。
 歩いた後ろを振り返ると、少しゴム底の跡が着いてたけどね。

 廊下は、玄関前から左右に伸びてた。
 向かって左手の先は、校長室や教員室が並んでそうな雰囲気だった。
 廊下の突きあたりには、塗装の剥げた金属ラックに、掃除道具が下がってた。
 そこから廊下は、中庭を囲むように折れてるらしい。
 折れた先にはたぶん、教室が連なってたと思う。
 わたしはそっち方向は選ばず、右手の廊下を目指した。
 だって、教員室なんかのありそうな方には、行きたくないものね。
 あの2人だって、きっと一緒よ。

 向かって右手の先も、中庭を囲むように曲がりこんでるみたいだった。
 でも、曲がり角の手前で、足が止まった。

 声が聞こえたのよ。
 間違いなくさっきの声。
 ともみさんって呼ばれてた、他校の子。

「あけみ。
 ほんとに似合ってる。
 会うたびに、ますます似あってくるわ。
 馴染んでくるっていうのかしら?」

 わたしは、そっと角から覗いてみた。
 驚いたわ。
 手ぶらだったからいいけど、何か持ってたら落っことしてたかも知れない。

 廊下の先は、ちょっと不思議な構造だった。
 廊下の右手はずっと、下駄箱のあるコンクリート土間に面してるわけだけど……。
 その土間が、廊下の突きあたりから、左に折れてるの。
 つまり廊下は、中庭に曲がる手前で途切れてるわけ。
 でもね、そこには木橋が掛かってたの。
 コンクリートの川にかかる橋みたいな感じね。

 橋を渡った先は……。
 舞台みたいに見えた。
 灰色の冷たい川が、客席と舞台を隔ててる。
 2つの世界を繋ぐのは、花道みたいな木橋。

 舞台の設定は、2階に続く広い階段だった。
 ともみさんは、その階段の下で、背中を見せて立ってた。
 あけみちゃんは、階段の手すりを支える柱の前で俯いてた。
 両腕を、後ろに回してね。
 制服の上腕から胸は、太いロープに戒められてた。

 一瞬、何が起こったのかわからなかったわ。
 あの親密そうに見えた2人の、ひとりが縛られてるんだもんね。
 でも、その場の雰囲気からして、縛ったのはともみさんとしか思えない。
 ともみさんは、ロープの張り具合を確かめるように、あけみちゃんの前を左右に歩き始めた。
 ともみさんの背中越しに、階段脇が見通せた。
 階段脇からずっと、中庭に面して土間コンクリートが続いてて……。
 行き止まりは通用口みたいだった。
 通用口は開いてた。
 裏山の緑が、すぐそこに見えたわ。

 ともみさんの靴音が、床板を鳴らしてた。
 そこで、初めて気がついたの。
 この2人の靴が、生徒玄関に無かったわけ。
 2人とも、外履きのまま上がってたのよ。
 どうやら、使われてない校舎って予感は、あたってたみたい。
 人のいる気配が無かったしね。
 空気が動いてない感じ。

「あけみ。
 顔あげて」

 ともみさんの声に、あけみちゃんの顎が上がった。
 縋るような瞳が、ともみさんを見あげた。

「またそんな顔して。
 ヤらしい顔。
 すっかり気分出ちゃってるみたいね。
 ちょっと縛っただけで、そんなになるんだから……。
 驚いちゃうわ。
 そういうのって……。
 マゾって言うんだよ」

 あけみちゃんの胸が、小刻みに起伏し始めた。
 あけみちゃんの胸には、乳房を挟むように、ロープが上下に渡ってた。
 紺ブレに、深い皺が寄ってた。
 おそらく、あけみちゃんの腕には、縄目がついてたと思う。
 はた目から見ても、きつい縛り方だった。

「どうしてほしいの?」

 あけみちゃんは、小鼻を細かく震えさた。
 泣き出す寸前みたいだった。
 でも、戦慄いてるように見えた唇からは、思いがけない言葉が零れた。

「もっと……。
 もっと縛って。
 もっと……、もっときつく」

 訴えるような言葉とともに、あけみちゃんの瞳から、涙が零れた。

「相変わらず変態ちゃんだね。
 でも、ほんとに綺麗な顔。
 涙が似合う顔よね。
 男の子が見たら、イチコロじゃないの?
 でも……。
 そんな顔しながら、下の口からも涙を流してるなんて知ったら……。
 きっと、人生に絶望しちゃうよ?
 さぁて、今日は……。
 どうしてやろうかな?」

 そう言いながらともみさんは、再び歩き始めた。
 あけみちゃんを見据えながら、右に左に。
 あけみちゃんの目が、子犬のようにともみさんを追っていた。

第三話へ続く

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~7

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第七話【尋問】

麻縄を手にしてからの林田の行動は、素早かった。何度もシミュレートしたのだ、抜かりは無い。遙の腕を取り、後手にしたかと思うと、見る間に縄を掛けていく。想像を超えた、担任の異様な行動。彼女は混乱し、どう反応してよいものか戸惑っている。
やや小振りの乳房を挟んで、きつく掛けられる縄が少女の胸を圧迫していった。

「変態教師…最低」
乱れた髪の奥から、キッと刺す目は怒りに満ちていたが、内心は、牙を剥いた担任教師に恐れおののいている。泣き出しそうな自分が居た。遙はそれを悟られまいと、目一杯の虚勢を張る。
「早く!縄、解いて!大声出すわよ!人を呼ぶわよ!破滅させてやる!」
ふん。出せるものなら出してみろ。男には余裕があった。
初動で暴れるなり、悲鳴を上げるなりしなかったのを見て、(助けを呼ぶタイミングを逸したな)と、ほくそ笑んだに違いない。教育者としては甚だ不適格であったが、思春期から青年期へ移行途中の、少女達の複雑な心理を熟知している。どれほど毛嫌いしようと、対峙しているのは、顔見知りの教師なのだ。遙が、校舎の外に届くほどの大声を出すには、よほどの勇気が伴うはずであった。一見、大胆に見えても、教え子凌辱計画は、彼なりの理屈で緻密に組み立てられたものだった。
万一、騒がれても良い。今朝、中庭をはさんだ別校舎の職員室で、数人の同僚を見かけたが、おそらくこちらの校舎の中には二人きりだ。隣の校舎、職員室の在る一階では、ここ四階で起こっている異変に気付くのは、至難であろう。

それでも彼女が、とっさに悲鳴を上げ、助けを求めていれば、あるいは違った展開になっていたかも知れない。なぜならこの時、ちょうどバレー部の練習が休憩に入り、何人かが体育館の外で、たむろしていたからである。体育館は、四階から見下ろせる位置にあった。
「自分で何とかしてみせる」そんな遙の負けず嫌いの性格が、災いしていた。

「そうか、破滅させるのか…」
助けを呼べるものなら呼んで見ろ。教師はいきなり教え子のブルマを摺り降ろした。「ヒッ!」呑んだ息が、辛うじて小さな悲鳴となる。
「こんな格好で先生と二人きりと知れたら、お友達はどう思うかな?どう見てもSMプレイだな」
噂に尾鰭が付いて、学校に居られなくなるぞ。奴らは面白おかしければ何でも良いのだ。俺も破滅だが、お前も道連れにしてやる。
「それに…お前」
大学生と付き合ってるそうじゃないか。自分の彼女が中年男とSMプレイとは。恋人もきっと悲しむと思うぞ。(そんな事、何で知ってるの?)それまで強気だった、遙の顔が曇る。
「そいつとは、今まで何回SEXしたんだ?」
「あんたに関係ないでしょ!」
無礼な言葉遣い。自分の置かれた立場が理解できていないのか。まぁ良い。じっくり教えてやるさ。
「どこの大学かは知らんが、女子高生を喰うとはとんでもない奴だ!それこそ淫行条例違反だな」
「彼とは一度もそう言う事はありません!」
「嘘を吐け!」
そんなやり取りが数分続いた。

「本当の事を言え!」「ネタは上がってるんだ!」「バカにしてるのか!ああん?」
遙が卑猥な質問を拒絶する度に、床を打つ竹棒の音が教室に響く。
それに合わせ、威勢とは裏腹に、ビクッビクッと反応する教え子の姿が、担任教師には、たまらなく愉快であった。
元々、この男はそういった“嗜好”なのだ。単に女を抱くだけでは満足しない。相手の抵抗が大きければ大きいほど、支配の過程を楽しめる。かといって、自立した成人女性を標的にするわけでもなく、矛先は弱い女生徒達に向けられた。そこに林田の屈折がある。そういった意味で遙は、男の欲望を満たす条件が揃った、まさに格好の獲物と言えた。

(そうだ、これだ!求めていたのはこの感じなのだ)

第八話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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放課後のむこうがわ 1

杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、
全20話の長編小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週火曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに!

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■放課後のむこうがわ1

「わたしが転校した学校の話、したことあったっけ?」

 美里の問いに、美弥子は首を横振った。

「噂とか、聞いてた?」
「寄宿舎のある学校ってくらい」
「そう。
 寄宿舎!
 今どきねー。
 でも、あの姉から逃れるためには、そんなとこに逃げこむしかなかったのよ」

 そう言って美里は、口元のカップを傾けた。
 細い喉首を、紅茶が降りていくのが見えるようだった。
 美里は両肘をテーブルに付き、両手でカップを抱えていた。
 口元から離したカップを鼻先に掲げ、ゆっくりと揺らす。
 揺れる紅茶の中から、遠い記憶が湯気となって立ち上がるように……。
 美里は、紅茶を見つめたまま話し始めた。

―――――――――――――――

 学校はね、兵庫県の山の中にあったんだよ。
 刺激的なものは、周りになんにも無いとこ。
 同じ敷地に、学校と寄宿舎が並んで建ってる。
 外部との接触は、ほとんど無し。
 そこで、純粋培養のお嬢様が養成されるわけ。

 わたしが転校したのは、2学期の途中だったでしょ。
 そんな閉鎖的な環境だから、友達関係とかが、もう完璧に固まってるわけ。
 転校生なんて、静かな水面に投げ入れられた小石よ。
 平穏な日々を乱す異分子って感じかな。
 あからさまに虐められはしなかったけどさ。
 どのグループもテリトリーを固く閉ざして、わたしを迎え入れようとはしなかった。

 でもね。
 わたしには、むしろありがたかったの。
 友達が欲しかったわけじゃないし。
 放って置かれるのは、逆に気楽なものよ。
 何するにしても、ひとりで気ままに動けるしね。

 でも、学校はそれで良かったけど……。
 寄宿舎では、やっぱり困った。
 3人部屋なのよね。
 各学年、1人ずつの。
 わたしの入ることになった部屋は……。
 新入生の数が、足りなかったみたいで……。
 1学期から、2年生と3年生の2人だけだったらしいの。
 一目見ただけで、この2人、出来てるって感じたよ。
 部屋が、桃色の靄に包まれてるみたいな感じ。
 わたしは、完璧に邪魔者扱いよね。
 新婚夫婦の部屋に、赤の他人が同居するようになったみたいじゃない?
 口では直接言われなかったけどさ。
 邪険な仕草を隠そうともしなかった。
 学校と違って狭い空間だから、ほんとに息が詰まった。

 で、学校が終わっても、寄宿舎には帰りたくなかったの。
 と言って、部活動なんて、もっと嫌だし……。
 仕方なく、校内を探検してた。
 特別教室とかわからなくても、教えてくれる子なんていなかったからね。
 まごまごしないためには、自分で覚えるしかなかったの。

 校舎は、比較的新しかったわ。
 何の変哲もない、鉄筋コンクリート。
 10何年か前、建て替えられたみたい。
 図書館には、卒業アルバムがずらっと並んでて……。
 ヒマだから、お昼休みにそれ眺めてたりしてたの。
 建て替えられる前のアルバムには、木造校舎が写ってた。
 田舎の小学校みたいな感じだったな。
 こんな校舎の学校に、1年の最初から入って……。
 平穏に過ごしたかったって、つくずく思ったものよ。

 そんなある日のこと。
 その日の放課後も、校内めぐりをしてたんだ。
 1階の、体育館に続く廊下の脇に……。
 見慣れない通用口を見つけた。
 その廊下は、何度も通ってたはずなんだけど……。
 通用口なんか、見た記憶が無いのよ。
 不思議に思って、引き戸に手をかけると……。
 鍵も掛かってなくて、するすると開いた。
 生暖かい風が、顔を打ったわ。
 なんか、空気が違うのよ。
 10月の空気とはさ。
 乾いた地面には、雑草がちらほら生えて……。
 みずみずしい緑を見せてた。
 ヘンに心惹かれてね。
 通用口の外に出てみた。
 内履きのままだったから、ヤバいかなと思ったけど……。
 地面も乾いてるみたいだし、いいかって。
 その学校、内外の区別が妙に厳しかったのよね。

 廊下に顔だけ入れて、誰もいないことを確かめると……。
 引き戸を閉じた。
 その瞬間、背中からふわって風を感じてね。
 振り返って驚いた。
 雑草の生えた地面の向こうに……。
 木造校舎が建ってたの。
 卒業アルバムで見た校舎と同んなじ。
 古い小学校みたいな校舎ね。
 まだ取り壊されてなかったんだって、感激したよ。
 ひと気も無いし……。
 いいとこ見つけたって思った。
 ここなら、放課後の時間つぶしに打ってつけだもの。

 校舎に近づくと、なんか懐かしい匂いがするの。
 胸がちょっと痛くなるような……。
 “学校”の匂いね。
 建物は、瓦屋根の載った2階建て。
 建物の外壁には、色の褪せた横板が、何段にも貼りめぐらされてた。
 顔より高い位置には、大きな窓。
 もちろん、窓枠も木製。
 でも、窓には磨りガラスが入ってて……。
 伸び上がって覗いても、中が見えなかった。

 どこかから入れないかなって、建物を回りこんでみた。
 もし入れたら、それこそ絶好の隠れ家だもんね。
 でも……。
 建物の角を、裏側に折れたところで足が止まったわ。

 人がいたのよ。
 女の子がひとり、外壁の横板に背中を預けてた。
 わたしと同じ制服。
 紺ブレに、グレーのプリーツスカート。
 紺のハイソックス。
 でも、見かけたことの無い顔だった。
 もちろん、転校して間がないわけだから……。
 生徒全員の顔を、知ってるわけじゃなかったけどね。
 でも、同じ学年なら、見かけたことくらいあると思うんだ。
 と言って、上級生にしては、顔立ちが幼いし。
 入学したばっかりみたいな雰囲気なのよ。
 スカートの前で、真新しい鞄を両手で下げてて。
 少しうつむいて、ストレートの長い髪が、肩を包んでた。
 可愛い髪型だったわ。
 左サイドの一部が、三つ編みになって下がってた。

 声を掛けようかって思った。
 独りぼっちで立ってるその子が、自分と同じに見えたのかもね。
 なんだかんだ言って、やっぱり寂しかったんだよ。
 その子は、見るからに人待ち顔だったから……。
 ひょっとして、わたしを待っててくれたのかも、なんてね。
 そんなはずないんだけどさ。

 思い切って歩き出してすぐに、自分の馬鹿な思い違いに気がついた。
 その子の顔が、ぱっと輝いたんだけど、目線はわたしの方を見てなかった。
 目線の先には、もうひとりの女子高生がいたの。
 女子高生は口元をほころばせ、柔らかい声で呼びかけた。

「お待たせ、あけみ」

 あけみと呼ばれた子は、寄りかかった外壁から背中を離した。
 満面の笑みで、目線の先の女子高生を迎える。
 2人は校舎前で向き合い、互いの目を覗きこみながら、微笑を交わした。

 でもね……。
 あとから来た女子高生は、うちの生徒じゃなかったの。
 制服が違ってた。
 紺のスクールベストで、上着は着てなかったけど……。
 スカートは、グリーンとネイビーのタータンチェック。
 あと脚元も、白のショートソックスだった。

 部活なんかで、よその高校と交流することはあるから……。
 他校の生徒が校内にいたって、おかしいことはないんだけどさ。
 でも、ひとりだけで行動するってのは、まず無いんじゃないかな。

「ずっと待ってたよ。
 ともみさん」

 まぶしそうに見上げるあけみちゃんに、ともみと呼ばれた子は小さく頷いてみせた。
 内巻きのボブが、肩の上で揺れてた。

「ふふ。
 いい子ね。
 じゃ、行こうか」

 そう言って、ともみさんは、校舎の方へ歩き出した。
 あけみちゃんは、寄り添うように肩を寄せた。
 2人の姿は、校舎の角を曲がって消えた。

 後をつける気なんか、最初は無かったんだけどさ。
 なんとなく、2人の雰囲気が気になってね。
 普通の友達同士、って感じじゃないのよ。
 そういう雰囲気の2人連れは、校内でもときどき見かけた。
 友達とは違う、親密な気配を感じさせる2人。
 早い話、カップルよね。

第二話へ続く

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~6

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第六話【抵抗】

(この男は、女子更衣室で何かをしていたのだ!見られてマズイ何かを…多分それは…)

土曜休日に出勤する理由の無い、学校に居るはずのない教師が顔を引きつらせ、今ここに立っている。改めて、その不自然さに戦慄した。林田が、前任校で起こした破廉恥行為が脳裏を掠める。
すでに鍵は掛けられている。いや、ここは学校だ。まさか、いきなり下手な事は出来まい。油断があった。いざとなれば、さえない中年男の一人ぐらい撃退できる、とも思っている。自尊心と言ったほうが良いかも知れない。わずかでも退けば、なにかこの卑小な男に敗北するような気がしていた。
一方で遙は、自身の膝が小刻みに震えているのを感じている。怖かったのだ。それを林田に感付かせぬよう、毅然と睨み返していた。

ふん、とぼけているのか。あるいは、本当に見ていないのか。それならそれで構わない。「犯る」と腹を括った以上、理由はもう何でも良いのだ。
「ところでお前、先生の悪い噂を触れ回っているそうじゃないか?」
お前の作り話で、先生は困っているぞ。どうして、前の学校の事をお前が話せるのか。事情を知るはずも無いのに、不確かな話を広めるな。
「立派な名誉毀損だな、警察に言えばお前、逮捕されるぞ」
出任せだった。高校生と言っても、所詮はガキなのだ。“逮捕”という言葉は、ほとんどの少女に有効に作用する。

事実、十数年前に初めて凌辱した女生徒は、終始この脅しで支配した。当時はまだ、林田も“初心者”で加減が分からず、少女の精神が変調をきたすほど性虐の限りを尽くす。無慈悲にも、男は一年半もの間、教え子の肉体を弄んだのだ。
だが、在校中も卒業後も犯罪が露見する事は無かった。全くの被害者であるのに。鬼畜教師によって、彼女自身も罪を犯していると教育された結果だ。この事で学習した林田は、以降「逮捕されるぞ」を常套句とするようになる。
ところが遙は、これまで林田が相手にしてきた、無知な少女達とは違った。

「名誉毀損ねぇ…バッカじゃないの」
こんな言い方が出来るのか。こいつ。可憐な容姿に似合わぬ、おおよそ彼が、これまで遙に抱いていたイメージと違う乱暴な口調。そしてそれは、明らかな軽蔑を含んでいた。動揺。
「あんたが、前の学校で女の子に酷い事をしたのは、事実じゃないの?」
この野郎、言わせておけば。さらに動揺。担任教師の顔が見る見る紅潮する。
かまわず、教え子は言葉を続けた。この際、ハッキリしておきましょう。私たち女子は、あなたのクラスであることに、もう耐えられないんです。エロ教師!ロリコン教師!変態教師!
「警察に捕まるのは、そっちのほうでしょ!」
「うるさい!黙れ!」
思わず、あるいはシナリオ通りだったか。一発、ビンタを喰らわせた。腕力自慢の男でない。それだけに手加減しなかった。少女は身体をよろめかせ、頬を抑えながらその場にへたり込む。

“教師”には、「教育に熱心なあまり、つい…」という免罪符が存在する。通常、ここまでなら、いくらでもウヤムヤに出来る事を、林田は経験的に知っていた。どうせ、当事者同志の証言しかないのだ、理由は何とでも造ればいい。最悪でも、「どの学校にも一人二人居る体罰教師」で済む。学校だって、事を大きくしたくないのだ。たいしたお咎めは無いだろう。
だが、そもそもが、盗撮を知られてしまったかもしれない、という懸念にある。
(ここから先は…)
林田は、遙が床に崩れ、声も出せず呆然としている合間に、教室の隅に無造作に積んであった麻縄を手に取った。巻かれている縄をシュルルと解き、獲物に歩み寄る。
ついに男は、言い逃れの出来ない、危険な領域に足を踏み込んだのだ。これまで思い描いた淫靡な妄想の入口に立っている。

第七話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~5

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第五話【鍵】

少子化の影響で、この学校でも年々、空き教室が増えている。取り壊しの決まっている旧校舎を閉鎖してなお、二棟ある本校舎の内、一棟の三階四階の大部分が使われていなかった。

遙が林田によって引きずり込まれたこの教室は、旧校舎からの引越しの際に出た不用品の一時保管場所となっていた。学校机や椅子だけでない。古い体育マットもあった。この春完成したばかりの新校舎へ引越しした、保健室の古い什器や器具を中心に、雑然と置かれている。そして、何かの作業で使ったのであろう、竹棒や麻縄も見えた。これらは来年、旧校舎の取り壊しと共に、廃棄されてしまう運命にある。
普通の人間にとっては、何の変哲も無い空き教室の光景。しかし、ある性向を持つ者に掛かれば、情欲を掻き立てるに充分な空間だ。従って、林田が卑俗な妄想の中で、遙を凌辱する舞台も、この場所である事が多かった。

男にとって幸運だったのは、空き教室が、女子更衣室の隣に位置していた事だ。盗撮カメラは電波で映像を飛ばすタイプのものだったが、録画機を設置するのに、隣接した部屋は都合が良い。しかも、隠す場所が幾らでもある。彼は、数々の赴任先でこの犯罪行為を行ってきたが、これほど仕事し易い環境は他に無かった。

早速、空き教室の鍵の管理を申し出た。転勤早々で、訝しがられやしないかと思ったが、あっさり了承される。すでに、全く使われておらず、不用品置き場と化した空き教室の鍵の係りなど、関心を示す者など無い。スペアキーは事務室にあったが、念のため、ここの鍵だけは、隙を見て別のものにすり替えた。同時に、無許可で内鍵を設置する。これで、万一にも作業中、誰かが入って来る事は無い。保管されている什器類を廊下側に移動し、窓を塞いだ。外から中を伺えないと同時に、多少の防音効果も期待する。
以降、教室は完全に彼の占有物となっていた。そのうち頑丈な支柱を設置し、新たな犠牲者を恥ずかしい緊縛姿で吊ってやりたい。居心地の良い空間で、そのように楽しく思い描いたりもした。

土曜日、人気のない校舎4階。荒々しく短い開閉の音を残し、教え子と担任教師は揉み合いながら、その教室の中へと飲み込まれていった。
「一体、何ですか?」
声にトゲがあった。遙は、強引に教室に連れ込まれた事に、あからさまな嫌悪の表情を浮かべている。ただでさえ遅れて登校したのだ。はやく練習に合流しなければ。とも思っていたが、なにより、目の前の男がセクハラ教師である事に、彼女は不機嫌になっていた。

「何を見た?」
休日登校で、部活か。熱心だな。といった担任教師らしい前置きは一切無い。
幾分声が上滑っていた。教え子を、さらに教室の奥に突き押し、自らは振り向き鍵を掛ける。
この時はまだ、遙は林田の質問の意味が分からない。「はぁ…」と答えた。彼が女子更衣室から出てくるところを見ていないのだから、当然である。見慣れぬ内鍵にも、不安を覚えていない。
「とぼける気か!見ただろ?」
一度目より、やや強い調子で担任教師が問い詰めた時、彼女は、この男が(生徒に見られて不味い事を、やっていたのだ)と気付く。これほどまで強く、詰問せねばならない理由。

遙の頭の中で検証が始まっている。先程、林田と遭遇した場面が、高速でリプレイされていた。
自分から見て更衣室は、四階の一番奥に位置する。階段を昇り廊下へ出た時、彼はその隣、この教室付近を歩いていた。階段は東西に2箇所あったが、対に位置する階段は、それら二つの部屋の手前にある。だから、更衣室か、この教室から出て来たところではなかったか。普段から出入りの無い、空き教室に用事とは考えづらい。つまり。
そこまで考えが及んだところで彼女は、決して有ってはならない結論に行き着いた。

第六話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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