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「もっと近くに寄って。
 そう。
 中まで見える?
 やっぱ、しゃがまないとダメね」
 ともみさんの言葉を待ってたように、わたしは腰を落とした。
 和式便器を使う姿勢だった。
 俯いた花を、真下から見上げる。
 花は、蜜を溢れ零してた。
「どう?
 綺麗?」
わたしは、がくがくとうなずいた。
「あなたのも丸見えよ」
 わたしは、両膝を開いてしゃがんでた。
 はしたないおまんこが、ともみさんに見えるように。
「弄っていいのよ」
 ともみさんは親指を使い、クリの皮を剥きあげた。
 つやつやと光る肉色の珠が、宙に零れた。
 腿裏を撫で下ろしながら、わたしの指先が股間に届く。
 そこは、熱い泥を噴き零してた。
 熱泥をまぶした指先を、真上にスライドさせる。
「あひ」
 背肉がうねった。
 見下ろすと、揃えた指先が陰核を隠してる。
 指先を、ゆっくりと始動させる。
 楕円の軌道を描かせながら、徐々に力を込めていく。
 すぐに制御が効かなくなった。
 高速で回り始めた指先は、たちまち輪郭を消し……。
 オーバルの軌跡だけが、流星みたいに尾を引いて流れた。
「あぁぁぁぁぁ」
顎が落ち、口元から悦楽が零れる。
「ちょっと。
 もうイキそうなの?
 せわしない子ね。
 ちゃんと見えてる?
 わたしのまんこ?」
 わたしは、かくかくとうなずいた。
 内腿に伝うナメクジみたいな跡まで見えてることを、目で訴えた。
「もっと寄って。
 ほら、アヒル歩き」
 わたしは、哀願の瞳で振り仰いだ。
 もう、この場でイカせてほしいと。
「ここに、キスしていいのよ。
 わたしの陰核を、鼻で潰しながら……。
 溢れ零れる蜜を、思い切り吸いあげて」
 わたしの脚が、人ごとのように動いた。
 ともみさんの脚元に、躄り寄る。
 ともみさんの片腿を抱えながら、真上を振り仰いだ。
 ほんとに綺麗な性器だった。
 小さな、おちょぼ口。
 膣前庭に穿たれた、尿道口まではっきり見えた。
「嗅いで」
 クビを伸ばし、鼻を突きあげる。
 微かな尿臭が匂った。
 幼いころを思い出しそうな、懐かしい香りだった。
「もっと、鼻くっつけて」
 言葉と同時に、後ろ頭を引きつけられた。
 顔面ごと、ともみさんの股間に飛びこんだ。
 鼻先が、スリットに潜りこんでた。
 熱かった。
「吸って」
唇を付けようと顎を上げると、鼻先はスリットを抜け、陰核に定まった。
「そこそこ」
 ともみさんのしてほしいことが、瞬時にわかった。
 陰唇の狭間に口を着け、溢れ出る蜜を吸い上げる。
 同時に、鼻先で陰核を捏ね潰した。
「わひぃ」
 はしたない声をあげながら、ともみさんが腰を煽る。
 わたしは、ともみさんのお尻を抱えこんだ。
 尻たぶの窪みが、手の平で踊った。
「いぃっ。
 いぃっ」
 ともみさんは、容赦なく腰を押しつけてくる。
 同時に、後ろ頭も引きつけられる。
 凄い力だった。
 陰唇が、蛭みたいにわたしの口を覆った。
 鼻先もひしゃげて、スリットに呑みこまれた。
 鼻梁が、陰核を潰してた。
 ほとんど息ができない。
 わたしは、ともみさんのお尻を叩き、苦痛を訴えた。
 でも、ともみさんは聞いてくれなかった。
 抱えられた後ろ頭が、揺さぶられる。
 息が苦しくて、ともみさんの腰を突き放そうとした、その時……。
「はぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 ともみさんが咆哮した。
 蒸気機関車の汽笛みたいだった。
「くわっ。
 くわっ」
 汽笛は途絶え、カエルが潰れるみたいな奇声に変わってた。
 後ろ頭が振り回される。
 絶息する……。
 そう思った刹那、後ろ頭を掴む手から、力が抜けた。
「はふっ」
 顔面を振り起こし、空気を貪る。
 顔面を振り起こし、空気を貪る。
 ともみさんが、見下ろしてた。
 真っ白い目を見開いて。
 半開きの唇から、涎が一筋伸びてきた。
 下りてくる雫の珠に、わたしが映ってた。
 いや、わたしが雫の中に入ってるんだ……。
 なんて、ぼんやり思った途端、雫が目の中に落ちた。
 わたしは、銃弾に撃たれたみたいに跳ね退いた。
 わたしの支えを失っても、ともみさんはその場に立ってた。
 真っ白い目が、床板を睨んでた。
「あぶぶ」
 唇から、あぶくが噴き零れた。
 床を指してぶら下がった両手の先が、ビンの蓋を開けるみたいに回ってた。
 階段柱にあげた片脚が、ゆっくりと離陸する。
 バレーダンサーが片脚足立ちしたポーズが、一瞬だけ固定された。
 窓枠からの光が、そのフォルムを包んでた。
 光を背に受けたともみさんの輪郭が、ダイヤモンドリングみたいに輝いた。
 頭の中で、ゆっくりとシャッターの落ちる音がした。
 刹那……。
 ともみさんの身体は、その場に崩れ落ちた。
 床板には、2体の壊れた人形が転がってた。
 ともみさんとあけみちゃん。
 横向きのあけみちゃんの目蓋は、すでに閉じられてた。
 制服の胸が、規則正しく起伏してる。
 白い頬に、光が浮いてた。
 対するともみさんは、まだ死にたてって感じだった。
 仰向けに転がった勢いで、両脚は大きく開いてた。
 スカートは、お腹の上まで捲れ……。
 無毛の下腹部が剥き出し。
 陰核は、真珠を嵌めこんだみたいに勃起したまま。
 半開きの陰唇は、まだ新しい雫を生んでた。
 わたしの脚は、夢遊病者みたいにひとりでに歩んだ。
 ともみさんの頭部に回りこむ。
 仰向けの顔が、真下に見えた。
 両目は見開いたまま。
 でも、大きく紡錘形に開いた目の中に、瞳は無かった。
 練乳のような眼球が、虚空を見据えてる。
 綺麗だった。
 わたしも、こんな顔をして死にたいと思った。
 わたしの指が、勝手に動き出してた。
 もちろん、陰核を揉んでるのよ。
 膝を開き、腰を落とした。
 いわゆる“がに股”の姿勢ね。
 この格好でする立ちオナニーは、ほんとに気持ちいいんだよ。
 快感を、情動が後押しするのかな。
 叫びたくなる。
 わたしは、変態なのよぉって。
 注射痕を揉むように動き出したわたしの指が、次第に速度を増した。
 見下ろす指先が、輪郭を消す。
 陰核は、たちまち練りあげられた。
「イ、イク」
 尻たぶが、魚の鰓みたいに宙を煽るのがわかった。
 刹那、瘤立った柱が全身を貫いた。
「あぎゃっ」
 視界が大きくぶれると同時に、緞帳が落ちたみたいに世界が暗転した。
 瞳が裏返ったんだね。
 自分の頭が、床に転がる音を聞いた気がする。
 それっきり、わたしの意識は消失した。
第十六話へ続く
文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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