緊縛の思い出 <1>


今でこそ緊縛大好きと豪語している私ですが、本当に好きと言えるまでには時間がかかっています。
ひと縛めでくずれ落ちた訳ではありません。

私の初縛られはプレイではなく、グラビアの仕事でした。SMに興味を持っていた私は、SMと名が付けば、どんな仕事も受けていたのです。(スカトロ系NG)
ビニ本の縛りでは、太い綿ロープでの縛り。何の感動もありませんでした。
弱小出版社のSM専門誌。私が、縛りに興味がある、と言った事により、次から次と縛りが展開され、
私は半ば、何がどうなっているのかついていけない状態でした。

その縛りはきつく私の身体にくい込み、
私の心の中に土足で踏み込まれているようでした。私は心が辛くなり泣きながら仕事を終わらせ、
「もう二度と縛りの仕事はやりません」
そう言い放ち、現場を去ったのです。

私は真剣に悩みました。私の想っているSMなんて無いのか。もっと精神的ではないのか。所詮
肉体のみなのか・・・。
ついに自分一人ではどうしょうもなく、友人に相談したのです。すると、
「まだホンモノを知らないからだよ。巧い縄をかけられて、緊張感のある撮影を体感しなければだめだ。
それを知ってから、もう一度考えなよ」
この友人は、当時まだ編集人だった中野D児氏。この助言が、私の人生観を変えたのでした。

そして私は、東京三世社「SMセレクト」と出逢うのです。緊縛濡木痴夢男、カメラ杉浦則夫。
二十歳になるか、ならないかの時でした。今思うと、本当にあの時、自暴自棄にならなくて良かった。
そして、心ない人に縄を掛けられ、この世界が瞬時に嫌いになった女性がいるかも知れない。
そう思うと、初縛りの大切さをよく考えて頂きたい。心からそう願うのです。

早乙女宏美 – フェティッシュバー Black Heart