放課後の向うがわⅡ-18

 その人は、梁を支える柱を背にしてた。
 真っ直ぐに立ってれば、十字架にかかるキリストに見えたかも知れない。
 でも、その人は、床を踏んではいなかった。
 柱の中ほどの宙に、吊り下げられてたから。
 キリストのような、腰の覆いもなく……。
 全裸で。
 しかも、直立姿勢じゃない。
 大きく開いた両腿は、斜め上を指してる。
 両膝に縄が掛かってて、上から吊られてるの。
 膝から下は、真下に降りてる。
 いわゆる、M字開脚ってやつよね。
 股間は、剥き拡げられてるんだけど……。
 性器は見えなかった。
 臍下を回る横縄から、幾本も束ねられた縦縄が下り、性器から肛門までを覆ってる。
 でも、陰毛だけは隠しようがない。
 縦縄から覗く大陰唇に、翳のような薄い陰毛が烟ってた。

 両腕は、理事長と同じく、背中で束ねられてるみたいだった。
 幾本もの縄が、乳房を上下から潰してる。
 理事長のよりも、ひと回り大振りな乳房だった。
 鎖骨のすぐ下から、膨らみが始まってる。
 だから、乳房の上に掛かる縄は、傾斜の途中を押しつぶす形で回ってる。

 そんな姿を晒しながら、その人は、身動きひとつしない。
 足先の力が抜け、爪先が床を指してぶら下がってる。
 その人が意識を持ってないことは、誰の目にも明らかだった。
 でも、肌の色は艶やかに輝き、腹部が僅かに起伏してた。
 命を保ってることも、また明らかだった。
 柱に凭れた顔では、両目が閉じられてた。
 開いた時の大きさが想像できる、長い眼尻だった。
 睫毛の半分を、黒髪が覆ってる。
 それでも、誰かはわからない。
 その人の口も、布で覆われてたから。

「誰だかわかる?」

 首を振るしかなかった。
 でも、とうてい生徒には見えなかった。
 豊かな肉付きは、成熟した大人の女性を思わせた。

「それじゃ、ご披露しましょうね」

 先生はパンプスを脱ぐと、畳にあがった。
 柱に近づく。
 先生の息が届くほど近づいても、その人の目蓋は閉じられたままだった。

「よく眠ってる。
 まだ薬が効いてるのね。
 体質かしら。
 理事長は、先に醒めちゃったのに。
 あ、でも、この姿勢もあるのかな。
 なんか、後ろから抱っこされてるみたいに見えない?
 小さいころ、こんなふうに抱っこされて、道端でおしっこしたっけな。
 安心する姿勢なのかも知れないわね。
 でもやっぱ、大人がすると、イヤらしさ満々よね」

 先生は、その人に顔を近づけると、身体のカーブに沿って鼻先を動かした。

「いい匂い。
 雌の匂いってやつね。
 牡が嗅いだら、速効でおっ起つわ」

 先生は、その人の後ろに回った。
 先生の両手が、髪の後ろで動いてる。
 すぐに、白い布地が緩んだ。
 でも、柱と頭の間に挟まってるのか、布地は落ちなかった。
 先生は、その人の横に身を移した。
 片手は、布地を握ったまま。

「それじゃ……。
 ご開帳」

 白い布地は、プラナリアのように宙を泳ぎ去った。
 その人のすべてが、電球の下に曝された。

「もうわかったでしょ?
 誰だか」

 現れた唇は、少し開いてた。
 その唇の形を、わたしは知ってた。
 授業中、ずっとそこを見てたから。
 その唇から、綺麗な英単語が、音符のように零れるのを。
 そう。
 その人はまさしく、わたしが憧れてた、英語の川上先生だった。

 川上先生は……。
 生徒に人気のある先生だった。
 授業が終わった後も、ノートを持った生徒が教卓を囲み、なかなか帰してもらえなかった。
 転入したばかりのわたしには、それを見てることしか出来なかったけど。
 だから、川上先生と直接言葉を交わしたこともない。
 でも、憧れてた。
 ていうか……。
 はっきり言って、好きだった。

 その川上先生が、目の前にいる。
 しかも、全裸で吊られて。

 わたしは、肛門を引き絞った。
 お腹が痛くなるほど動揺してた。

「可愛い先生よね。
 美里も好きなんでしょ?
 わたしも昔は、このくらい可愛かったんだけどな。
 さすがに今は、対抗できないけど。
 でも、ほんと……。
 庇護してあげたくなる雰囲気よね。
 男が放っておかないでしょうに。
 それが、なんで山の中の女子高教師なんかになったのか。
 ずっと不思議だった。
 でも、最近になってわかったのよ。
 この綺麗な顔、綺麗な身体が、女しか愛せないってことを。
 つまり、レズビアンってこと。
 女子高にレズビアン教師ってのは、笑っちゃうシチュだけど……。
 いるのよね、やっぱり。
 でもほんと……。
 ノーマルな女性でも、この顔見てたら、変な気起きるかも」

 川上先生は、両目蓋を閉じたままだった。
 眼尻は、頬を覆う髪に隠れてる。
 大きな眼だった。
 開いてるときは、いつも潤んでるように見えた。
 生徒からは、“嘆き姫”なんて呼ばれてた。
 宿題を忘れたときなんか、あの大きな瞳が悲しそうに潤むと……。
 自分が、とんでもない大罪を犯したように思えるんだって。

「でも、ほんとに素晴らしい身体。
 着痩せするタイプなのね。
 顔が小さいからかしら。
 こんなにボリュームがあったとは意外よね」

 わたしは、思わずうなずきそうになった。
 決して、太ってるわけじゃない。
 でも、女らしい脂肪が、みっちりと着いて……。
 お臍の下を渡る縄で、肉が括れてる。

「苛めたくなる身体って云うのかしら。
 縛ってるときは、マジで興奮したわ。
 男になった気分」

 あけみ先生は、両手を腰の後ろに回し、川上先生の周りを巡った。
 まるで、美術品を鑑賞するようだった。

「オブジェみたいよね。
 だけど、限りなくイヤらしいオブジェ。
 美術の授業で、これをデッサンしなさいなんて課題が出たら、どうなるかしら?
 ま、男の子なら、我慢できなくなるでしょうね。
 わたしでも、ヘンな気分になるもの。
 この身体の前に立つと……。
 わたしのクリがペニスに変わって、精子出すんじゃないかって思うほど。
 綺麗だろうなぁ。
 この身体に精子がかかったら。
 練乳みたいな白い鞭が、この肌を縦横に打つの。
 あぁ、興奮してきた」

 あけみ先生は、ゆっくりと上体を折った。
 視線の先は、川上先生の顔から胸に移った。
 あけみ先生は、身を屈めたまま、川上先生の乳房を凝視してる。
 正確に云うと、乳房の中央から突き出た、乳首ね。
 女のわたしが見ても、吸い付きたくなるような乳首だった。
 ほら、高校生くらいだと、乳房は発達しても……。
 乳首が、乳輪に陥没してるみたいな子っているでしょ。
 でも、川上先生のは違った。
 まさしく、大人の乳首って云うのかな。
 烟るような薄い乳輪の上に、トッピングみたいに、球形の乳首が載ってる。
 ベリーの実みたいだった。
 唇に含んだら、きっと丁度いい大きさよね。

 あけみ先生の口元が、その実を頬張りそうに近づいた。
 鼻翼がはためいてた。
 匂いを嗅いでるのね。
 離れてても、川上先生の身体は香ってた。
 もちろん、香水とかの匂いもあるんだろうけど……。
 その奥から、もっと濃厚な匂いが噴きあげてるようだった。
 そう。
 まるで、森の奥から、百合の香りが漂ってくるみたいに。

 あけみ先生は、夢見るように目蓋を閉じた。
 鼻翼をはためかせながら、顔が小刻みに振れ始めた。
 いつの間にか、あけみ先生の片手は、自らの股間に回ってた。
 指先が、中心を練るように動いてる。
 1本だけ立った小指が、宙に楕円を描いた。

「川上先生……。
 廊下ですれ違うときも、教員室でお話するときも……。
 いつもわたし、先生の裸を想像してましたのよ。
 このスーツの下には、どんな裸が隠されてるのかって。
 そして、その白い肌には、どんな形に縄を打ったらいいかって。
 そう。
 わたしの中で先生は、いつも裸だった。
 その裸体にわたしは、自在に縄を打つ。
 白い肌を戒める縄は、先生にとって唯一の正装。

 先生はその姿で、教室の扉の前に立つの。
 扉の向こうからは、生徒たちの笑い交わす声が聞こえてる。
 わたしは先生の後ろに立ち、花嫁の介添人のように縄を整える。
 縄の衣装は、上半身だけ。
 歩いて登場してもらいたいから。
 縄は、乳房を上下から挟み、両腕に巻き付いて後ろに回ってる。
 背中で交差する手首の縄を確かめると、わたしは教室の引き戸を開く。

 生徒の幾人かは、もう先生に気づいた。
 先生は、僅かにためらった後、敷居を跨ぐ。
 まるで、結界を踏み越すように。
 全裸の先生が教室に入ると、生徒たちの笑い声は、一瞬にして消え去る。

 この時間は、そうね。
 保健の授業。
 机や椅子は、すべて教室の後ろに押しやられ……。
 生徒たちは、リノリウムの床に散らばってる。
 保健の授業なのに、何が始まるんだろうって話してたんでしょうね。

 さてそれでは……。
 特別授業の開始よ」

 わたしに背中を押され、川上先生は教室の中に歩み出した。


 生徒たちは息を飲んで立ち竦んでる。
 先生の素足が、リノリウムの床を踏む音まで聞こえそう。
 先生が教室の中央まで進むと、近くにいた生徒は、波が引くように後ずさった。
 その顔を見回しながら、わたしは厳かに語り出す。

「さて、みなさん。
 今日の保健の時間は、特別授業を行います。
 教師を務めるのは、わたくし、岩城あけみ。
 ご存知のとおり、音楽の教師です。
 なぜ、音楽教師が保健の授業を受け持つのか……。
 それは聞かないでちょうだいね。
 諸般の事情ってのがあるのよ。

 さて、本日の授業内容は、『女体の神秘』です。
 大事な授業ですよ。
 みなさんがこれから成長し、子供を産み、そして育てていくためには……。
 まず、自らの身体のことを、よく知らなくてはなりませんから。

 わたしの授業では、教科書など使いませんよ。
 薄っぺらな二次元の情報では、大切な事柄を伝えることは不可能ですから。
 で、『女体の神秘』を語るためには……。
 実際の女体を前にしなければならない。
 もちろん、わたしが裸になってもいいんだけど……。
 それじゃ、授業がやりにくい。
 と言って、みなさんの誰かに裸になってもらうわけにもいかない。
 誰かいる?
 志願者。
 わたし、みんなの役に立つなら、モデルになりますって人。
 山下さん、あなたクラス委員よね。
 どう?
 あなた、みんなのために、それこそ一肌脱げる?
 ダメ?
 ほかの人は?
 いない……、ようね。
 ふふ。
 何も、目を逸らさなくてもいいわよ。
 ま、これは予想できたことですけど。
 でも、人のために自らを投げ出すって精神は、わが学園の校訓でもあります。
 今日の授業は、この校訓を教師が実践してみせる、という意義もあるの。
 こうしてみなさんの目の前に、裸を晒している川上先生。
 憧れてる人も、少なくないんじゃないかしら。
 その先生が、みなさんのために、こうして自ら身を投げ出してくれてるわけ。
 どう?
 これが、わが校の校訓で謳われる“愛他の心”よ」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-17

 悲鳴とともに、擦り合わされた太腿のあわいから、水流が噴き出した。

「どこの世界に、脚閉じたままおしっこする人がいるのよ。
 脚を開けっての」

 先生が、片脚を抱え上げた。
 それを追って、もう片脚が持ちあがる。

「美里、そっちの脚抱えて。
 ほら、お腹から降りていいから」

 わたしは、すぐに言われたとおりにした。
 理事長のお腹に載ってることには、気が咎めてたから。

「いやぁぁぁぁぁ」

 両脚が開くと同時に……。
 綺麗に剃り上げられた股間から、ダムの放水口のように水流が噴き出した。
 暴れる脚を、懸命に抱き締める。

「起こすよ」

 あけみ先生が、顔を振って方向を示した。
 片手を、理事長の腰にあてがってる。

「せいのっ」

 先生の掛け声に合わせ、わたしも理事長の腰を押しあげた。
 理事長の背中が捲れ、腰が持ちあがる。
 理事長の下半身は、天井を指して起ちあがった。
 もちろん、おしっこは止まらない。
 中空に噴き出した尿は、理事長の頭を越えた。

「いやぁぁぁぁ」
「スゴいスゴい。
 公園の噴水に、こんなオブジェがあったらいいね。
 小便小僧なんかじゃなくて。
 まんぐり返しで、おしっこ噴き出す女の像」

 わたしの腕の中で、理事長の脚は、魚のように暴れた。
 懸命に抱き締めてると、次第に魚は弱っていった。
 理事長の全身から、強張りが抜けるのがわかった。

「やっと諦めたみたいね」

 理事長は、仰向いたまま泣いていた。
 頭上を叩いてた尿が、ようやく力を失い、泣き顔に降り注ぐ。
 理事長は、顔を背けて避けようとした。

「自分のおしっこじゃないの。
 ちゃんと飲みなさいよ」

 あけみ先生が、理事長の髪を掴もうとしたけど、もう間に合わなかった。
 水流は、一気に勢いを失い、理事長の胸を縫い上がった。
 名残の雫が、恥丘を濡らした。

「もう、お終い?
 なーんだ。
 つまんないの」

 先生は、理事長の脚を離し、身を起こした。
 わたしもそれにならう。
 理事長は、両脚が自由なまま床に投げ出された。
 起ちあがることも出来たはずだけど、頬を床に着けたまま泣くばかりだった。
 もっとも、背中のロープがあるから、逃げられはしないんだけどね。

「何だか魚河岸みたいね。
 床に投げ出された白イルカ。
 美里、水槽の水で、ちょっと流してくれない?
 両手入れて、ばちゃばちゃやって。
 そうそう。
 こっちまで届く?
 白イルカさん、おしっこまみれだから。
 無理そうね。
 あ、ホースがあるんだった」

 先生は、シンクに向かうと蛇口を捻った。
 床のホースが踊り出す。

「部屋の中で水撒きするなんて、初めて」

 ホースを拾った先生は、水の出口を指で絞ると、天井に向けた。
 電球の明かりを受けて広がる水は、蜻蛉の翅みたいに虹色に輝いた。

「理事長。
 雨漏り、大丈夫かしら?
 この下の部屋って、なんだっけ?
 ま、このぐらいにしておこうか。
 水漏れ騒ぎになったら面倒だから」

 先生は身を翻すと、シンクに消えた。
 ホースは命を失い、床に静まった。
 戻った先生は、腰に手を当てて床を見回した。

「スゴいことになっちゃったわね。
 これからが本舞台なのに。
 どうするかな?
 あ、そうだ!
 美里、その水槽、脇にどけて。
 水が減ってるから、動くでしょ。
 そうそう。
 そしたら、こっちに来て。
 ちょーっと、力仕事よ。
 畳。
 そこに立てかけてあるやつ、ここに敷こう」

 先生と2人で、畳を両側から持ちあげ、1枚ずつ運ぶ。
 乾いた畳が床に敷き詰められ、舞台は一変した。

「ふぅ。
 暑。
 けっこういい運動になっちゃったね。
 でも、見事に舞台転換が出来たじゃない?
 今度は、超和風よ。
 まさか……。
 少女漫画みたいなロココ調の建物に、畳部屋があるなんて……。
 お釈迦様でも、気がつくめい」

 先生は片脚を畳に上げて、見得を切るようなポーズを取ってみせた。
 先生のハイテンションが、手に取るようにわかった。
 股縄の解かれた先生の股間では、陰毛が、油絵のように滲んで見えた。

「さ、理事長。
 そんなとこに、いつまで寝てるんです?
 身体が冷えちゃいますよ。
 舞台に上がってください」

 先生の呼びかけにも、理事長は応えなかった。
 顔は、向こうをむいて倒れてる。
 表情は見えない。
 ひょっとして、気絶でもしたんじゃないか……。
 そんな風に思えた。

「ちょっと、理事長。
 狸寝入りは止めてくださいよ」

 そう言いながらも先生は、理事長の顔を覗きに行った。
 先生の影が、理事長の裸身に差した……。
 そのときだった。
 理事長が、突然跳ね起きたの。
 両脚の縄は、解いてあったのよね。
 ずっと転がったままだったから、理事長が起てるなんて、考えもしなかった。
 先生もびっくりしたみたいで、咄嗟に飛び退いた。
 起ちあがった理事長は、悪鬼のような顔をしてた。
 眼尻が上がり、唇は歪んでる。
 でも、綺麗だった。
 上半身に縄を打たれながらも、反逆の意思を失わない姿は……。
 江戸時代の女囚って感じ。
 見たことないけど。
 理事長は、先生を睨みつけながら、間合いを計ってるみたいだった。
 猫のように背を丸め、腰を落としてる。
 剥き出しの股間を、隠そうともしてなかった。

「ちきしょう!」

 理事長は、声とともに床を蹴った。
 身体ごと、真っ直ぐ先生に向かう。
 どうやら、身体能力は、理事長の方が上だったみたい。
 先生は、避けるのが精一杯。
 畳に身を投げ出した。
 理事長がそれを追って、畳に駆けあがる。

「はっ」

 理事長の長い脚先が、先生の頭を襲う。
 その蹴りを間一髪でかわすと、先生は畳を転がった。
 先生は、理事長の脚元を、這うように擦り抜けると……。
 さっき上がったところから、畳を飛び降りた。
 その背中を、理事長が追う。
 先生は、床の水たまりを駆け抜けた。
 理事長が、間近に迫る。

「あっ」

 理事長の身体が、一瞬ぶれたように見えた。
 ブーンという、弦の唸るような音がした。
 梁から伸びる縄が、一直線に張り詰めてた。
 理事長は、ちょうど片脚を振り上げようとしてたとこ。
 下は、水たまり。
 ひとたまりもなかった。
 足を滑らせた理事長は、水たまりに背中から落ちた。
 鈍い音がした。
 両腕を戒められた理事長は、受け身を取れない。
 どうやら、頭が床を打ったようだ。
 理事長の全身から、力が抜けるのがわかった。
 先生は、荒い息で、静まった理事長をしばらく眺めてた。
 ようやく理事長に近づくと、顔を覗きこむ。

「また、狸寝入りじゃないでしょうね?
 ひょっとして、死んだふり?
 まさか、ほんとに死んでませんよね」

 先生は、しゃがみこむと、理事長の顔に手の平を翳した。

「大丈夫。
 息してる。
 あー、びっくりした。
 こんなとこで死なれたら、大ごとよ。
 でも、これほど馬鹿な人だとは思わなかった。
 背中の縄が、梁に繋がってるのにね。
 ひょっとしたら、逃げるつもりなんかなくて……。
 わたしに一撃を加えたい一心だったのかも。
 そう考えると、不憫な気もするけど……。
 やったことの罰は、きっちり受けてもらいますからね。
 しばらく、そうしてなさい」

 そう言いながらも、あけみ先生は、理事長の傍らを離れようとはしなかった。
 まじまじと顔を覗きこんでる。

「意志を失った人の顔って、どうしてこう美しいのかしら。
 愛しくなっちゃう」

 首を差し出すようにして、理事長を見つめる先生の手の先は……。
 自らの股間に消えていた。
 肘から先が、忙しなく動いてるのがわかった。
 折り畳んだ太腿に、翳のように力が差した。

「あぅっ。
 あぁぁ。
 アブない、アブない。
 危うくイッちゃうとこだった」

 先生は、未練を振り切るように起ちあがった。

「さてと。
 お互い、トイレも済ませてすっきりしたところで……。
 2時間目の開始よ。
 さっき言ったように……。
 手動ウィンチは、2機設置されてる。
 ほら、こっちの作業台。
 なんで作業台を別にしたかって云うと……。
 ピアノの荷重に耐えらなくて、作業台の方が引っこ抜かれる怖れがあったから。
 ひとつの作業台に2台のウィンチじゃ、保たないって思ったのね。
 で、こんなふうに、作業台も2つ並んでるわけ。
 さて、こちらもご披露しましょうか。
 じゃーん」

 あけみ先生は、作業台にかかるブルーシートを剥ぎ取った。

「と言っても……。
 同じウィンチなんだから、芸も無いんだけどね。
 でも、こんな綺麗な機械が、2台並んだ光景って、かなり素敵じゃない?
 優秀な双子って感じよね。
 さてさて。
 このウィンチからも、ロープが伸びて……。
 天井の梁に渡ってる。
 梁を越えたロープは、柱に沿って下がってる。
 その下は、ブルーシートのカーテンが隠してる。
 でも、そのシートに隠されたものが何か……。
 転入試験を、優秀な成績でクリアした生徒のあなたなら……。
 わかるわよね?」

 先生はブルーシートの傍らに立ち、シートに手を掛けながら微笑んだ。
 もちろん、わかってた。
 双子の機械が吊り下げるものは……。
 きっと同じものだって。

「ま、誰でもわかるか。
 それじゃ、ご披露しましょう。
 えいっ」

 先生は、シートを引っ張った。
 金具でも弾けたのか、床に軽やかな金属音が立った。
 ブルーシートは、波が引くように消えてた。
 半分わかってたとはいえ……。
 息を呑んで立ち竦むしかなかった。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-16

「『はが』

 脇の下を滑ってた亀頭も暴発した。
 鈴穴のように膨れた射出口から、白濁液が噴き出す。
 真っ白い鞭が、理事長の顔面を袈裟懸けに叩く。
 もう一方からも。
 理事長の顔に、真っ白な“×”印が貼り付いた。

『おぉぉぉぉぉ』

 最後は、口に突っこんでた男性だった。
 狂ったように腰を使い、理事長の食道を犯す。

『がっ』

 暴発。
 撃ちこまれた大量の精液で、喉奥の吐瀉物が膨れ上がる。
 息が……。
 出来ない。
 目一杯見開いた視界が……。
 霞む。

『ぶふ』

 最後の鼻汁を噴き出し、理事長の瞳が裏返る。
 肛門のちんぽを押し出し、糞便がほとばしる。
 男性は、ひとりひとり姿を消し……。
 残ったのは、理事長の亡骸。
 立ち昇る湯気の中……。
 全身に精液を浴び、大の字に横たわる。
 そのまま腐っていけたら、どんなにいいでしょうね。
 ね、理事長?」

 傍らにしゃがんだ先生は、理事長の顔を覗きこんだ。
 理事長は、身を捩りながら顔をもたげた。
 顔にまつわる黒髪の下で、懸命に目を開き、先生を見上げる。

「どうして……。
 どうして、こんな……」
「わからないんでしょうね。
 でも、理事長。
 ここまでされなきゃならないことを……。
 あなたは、わたしになさったのよ」
「あの、先生」
「なに?」
「おトイレ、行っていいですか?」
「さっき出ないって言ってたじゃない」
「すみません」

 わたしは、内腿を擦り合わせた。
 水に濡れた理事長を見てたら、急に催して来た。
 下腹を触ると、パンパンに膨れてる。

「廊下に出たって、トイレなんて無いわよ」
「え?」
「このエリアは、プライベートスペースなんだから。
 もちろん、この部屋には作られる予定だったでしょうけど……。
 残念ながら、その前に工事中止ってことね。
 1階のホールなら、あるわよ。
 降りてく?」

 隣の理事長室には、あるはず。
 そう思ったけど、理事長室のトイレを使いたいとは、言い出せなかった。
 わたしは、脱ぎ落としたスカートを目で探した。
 ホールのトイレに行くつもりだった。

「ダメよ。
 下に行くんなら、その格好のまま」

 わたしを見上げる先生の瞳には、小さな悪意が浮いてるように見えた。

「誰が来るか、わからないわよ。
 下半身丸出しでいるとこ見つかったら……。
 どうなるかしら?」

 自分の唇が、への字に歪むのがわかった。
 ほとんど泣き顔だ。
 先生の顔では、逆に口角が吊りあがってた。
 からかい半分で言い出したことが……。
 今はもう本気になってる。
 そんな顔だった。

「おトイレなら、そこにあるじゃない。
 ほら、してごらんなさい。
 わたしが、さっきしたみたいに」

 先生は、床の水槽を指さした。
 さっきまで波立ってた水面は、すっかり静まってる。
 その水面を、おしっこが乱す大きな音まで聞こえた気がして、わたしは頭を振った。

「出来ないの?
 意外とお嬢様ね。
 でも、いまさら水槽にしても、面白くもないか……。
 どうしようかな……。
 あら?
 理事長、鳥肌が立ってますよ。
 肌も冷たい。
 床が濡れてるせいね」
「お願い……。
 わたしも、おトイレに行かせて」
「あらあら、すっかり冷えちゃいました?
 でも、それが無理な相談であることは……。
 お分かりになりますよね。
 だって、縄を解かなきゃいけないんですもの。
 美里、こっちに来なさい。
 ほら、理事長、寒そうでしょ。
 温めてあげなくちゃ。
 何してるの?
 ここでするのよ。
 おしっこ。
 冷えた理事長の体に」

 出来っこない。
 わたしは、心で悲鳴を上げ、飛び退ろうとした。
 その腕を、先生に掴まれた。
 思いがけないほど強い力だった。
 二の腕に、先生の指先が食いこんでる。
 音楽の授業での、力強いピアノタッチが耳に蘇った。

「ほら!」

 腕を引かれ、バランスを崩した。
 足を送ろうとした下には、理事長の体があった。
 わたしの片脚は、かろうじて理事長を跨ぎ越した。

「ほほ。
 ちょうどいいスタイルになったじゃない。
 ほら、そのまましなさいって」

 もう片一歩送って、理事長の上から身をどかそうとしたけど……。
 先生の腕が、わたしの肩を押さえこんだ。

「しなさい」

 出来っこない。
 首を振った刹那、腕を掴んでた先生の指が体側を滑り降り、下腹部に移った。

「あっ」

 お腹の上から、思い切り押された。
 フォルテシモで。
 指の背まで、お腹に埋もれた。

「あぁ」

 雫が零れた。
 慌てて尿道を締めようとしたけど……。
 もう、意思での制御は出来なかった。
 雫は、たちまち水流と化し、理事長を叩き始める。
 両肩にのしかかられ、身動きが出来ない。

「もっと上!
 顔にかけるのよ」

 引いた腰が、後ろから押し返される。
 背中に密着した先生が、腰をぶつけてきたの。

「ほら」

 パン!
 音高く肉が鳴った。
 先生の腰が、わたしのお尻を打つ音。

「ほらほら」

 パンパン!
 湿った連発音が、音符を撒き散らす。

「あ、あ、あ」

 止まらないおしっこの軌道が、生き物めいて踊り出す。
 中空で投げ縄みたいに姿を変えながら、理事長の顔面に飛びこんでいく。
 理事長は懸命に避けようとしてたけど、予測出来ない軌跡は、あざ笑うように逃げる顔を打った。

 パンパンパンパン!

「あぁ、気持ちいいわぁ。
 男の気持ちがわかる。
 バックからやるのって、肉体的な気持ちよさよりも……。
 きっと、精神的な歓びがあるのよね。
 雌を征服した牡の、咆哮のように噴きあげる歓喜。
 競争を勝ち抜き、自らの子孫をこの大地に残せる昂まり。
 まさしく、ファンファーレのように聞こえるはず。
 この音がね」

 パンパンパンパンパンパンパンパンパン!

「あぁ。
 ちんぽが欲しい。
 このお尻の奥に突っこむちんぽが!」

 先生の腰が速度を増し、わたしの全身はストップモーションのように踊り出す。

「あぁっ」

 背中に先生が被さって来た。
 キツく抱きしめられて、先生の息を首筋に感じた。
 おしっこは、もう止まってる。

「あぁ……。
 軽くイっちゃった。
 イケるのね。
 精神的な興奮だけで。
 起きたままの夢精って感じか」

 背中の重みが消えた。
 先生は、わたしから身を離し、理事長の顔の脇に立った。

「びしょびしょ。
 でもこれじゃ、水滴かおしっこか、わからないわね。
 理事長、温まりました?」
「お願い……。
 おトイレに行かせて」
「いまさら、それはないでしょ。
 おしっこまみれのくせに。
 でも、両脚が束ねられてたら……。
 しにくいですよね。
 じゃ、脚だけ解いてあげるから」

 あけみ先生は、理事長の足元に移ると、しゃがみこんだ。
 手際の良い指先が、脚の縄を解いていく。
 わたしは、跨いでた理事長の上から身をどかせた。

「ダメよ、降りて来ちゃ。
 脚の縄解いたら、動けるようになっちゃうんだから。
 お腹の上に座って。
 脚の方向いて。
 そう。
 ちゃんとお尻を落とす」

 わたしは、背中の下で戒められた腕を潰さないように、お臍の上に腰を降ろした。

「もう脚、開けますわよ」

 でも、理事長の両脚は、束ねられたまま開こうとしなかった。
 むしろ、身を揉むように擦り合わされた。

「ほら、そんなになってるのに我慢したら、体に悪いですわよ」
「お願い、どいて!」

 わたしは、思わず腰を浮かせかけた。
 理事長の身体が、アーチのように持ち上がる。

「押さえて」

 慌てて理事長のお腹に、両手をあてがった。
 アーチは、あっけなく潰れた。

「そう。
 両手はそのまま。
 身体を倒して、体重かけてごらん。
 お腹を押すのよ。
 ほら、魚の浮き袋みたいにパンパンに膨れてるとこ」
「あぁっ。
 ダメ!
 お願い。
 あっ。
 あぁぁぁぁぁ」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-15

「すっかりイキが悪くなっちゃったわね。
 これじゃ、市場でも売れ残りだわ。
 最初におしっこ入れれば良かった」
「せ、先生」

 わたしは、思わず声をあげてた。
 このままだと、ほんとに理事長は死んでしまう。
 そう思ったの。

「ふふ。
 人間って怖いわね。
 ぜんぜんそんな気は無かったのに……。
 走り出したら、自分を止められなくなる。
 ありがと。
 止めてくれて」

 先生は、大きくハンドルを回した。
 カチカチと響くブレーキ音が、頼もしく聞こえた。
 理事長の頭が、水中から抜き上げられた。

「がふっ」

 理事長は大きく口を開き、空気を貪った。
 水を孕んだままの髪が、火炎みたいに逆立ってる。
 黒い滝のようにも見えた。
 滝を流れ落ちる水が、水槽に飛沫を散らす。

「そろそろ、限界みたいね」

 理事長は、腹部を痙攣させながら呼吸をしてる。

「理事長、よく頑張りましたわね。
 今、下ろしてあげますよ。
 美里、理事長を引っ張って。
 身体の位置を水槽から外すのよ。
 カメラ、置いていいから」

 引っ張ってと言われても、どこに手をかけていいかわからない。
 まさか、頭を掴むわけにもいかないし……。

「縄があるでしょ。
 クビの後ろに回ってるとこ。
 そう。
 そこに指、引っ掛けて。
 綱引きみたいに、後ろ体重。
 よしよし。
 じゃ、下ろすわよ。
 手を緩めたら、また水の中だからね」

 わたしは踵で踏ん張りながら、全身の体重を後ろにかけた。
 理事長の身体が降りるたびに、一歩ずつ下がる。

「そうそう。
 その調子」

 こうして理事長は、ようやく逆さ吊りから解放された。
 長い苦痛から解き放たれた理事長は、床に仰のきながら、微笑んでるようにさえ見えた。
 束ねられた両腕が、背中の下になってたけど……。
 それまでの苦しみに比べれば、どうってことないみたいだった。
 全身の力が緩み、お腹だけが起伏してる。
 下腹部を回る縄に乗りあげた肉が、影を孕んで息づいてる。

 弛緩した理事長の両腿は、僅かに開いてた。
 あんまり見ては悪いような気がしたけど……。
 どうしても視線が切れなかった。
 わたしの視線は、理事長の股間に縫いつけられた。

「気がついた?
 でも、わたしが剃ったんじゃないのよ。
 最初から無かったの。
 つるつる。
 そういう変態趣味でもあるのかと思ったけど……。
 どうやらこれも、ヨーロッパかぶれみたいね。
 向こうの女性って、下の毛、剃っちゃってる場合が多いのよ。
 日本でも、先端的な子の間では流行ってきてるみたい。
 ハイジニーナ脱毛って、聞いたことない?
 ハイジって云っても、アルプスの少女のことじゃないわよ。
 『hygien(ハイジーン)=衛生的』ってのが語源。
 エステとかに、あそこの毛を永久脱毛しちゃうコースがあるみたい。
 でも日本だと、温泉とかがあるしね。
 まだまだ普及は難しいんじゃない」

 先生は、理事長の脇にしゃがみこんだ。
 股間を覗きこむ。
 気配を感じたらしい理事長が、両腿を閉じようとした。

「隠すことないじゃありませんか。
 こんなに綺麗なのに。
 欧米人は色素が薄いから……。
 剃りあげた大陰唇も、周りの肌と同色の場合が多いみたいだけどね。
 でも、アジア人が成人すると、どうしても色素が沈着しちゃうのよね。
 永久脱毛が、イマイチ流行らないのは、そういう体質も影響してるのかしら。
 剃っても、けっして少女のようには見えないのよ。
 大陰唇が、薄茶色に着色しちゃってるから」。

「でも、稀にいるみたいね。
 大陰唇の色が、ほかの肌の部分と変わらない人。
 まさに理事長が、そのおひとりってわけですね。
 こんなおまんこしてたら、見せたくてしょうがないわよね。
 だから剃ったんでしょ?
 つるつるに。
 あちらのヌーディストビーチで、見せまくってるんじゃありません?
 日本には、どうしてそういうパブリックスペースが無いんだろうって、ムカツイてるとか?
 あ、そんなことないか。
 むしろ、日本にはあったんだわ。
 昔から。
 お風呂文化。
 幕末に来航した外国人は、混浴風呂に仰天したらしいですもの。
 明治以降、欧米化を進める中で、混浴文化も圧殺されていったけど……。
 まだ、細々とは残ってる。
 そう、山の温泉宿とか。
 理事長も、ひょっとして隠れ温泉ファンだとか?
 こんな体が、突然湯煙の中に現れたら……。
 男性客は、びっくり仰天だわ。
 たちまち、ちんぽがおっ起っちゃって……。
 お湯から出れなくなる。
 お湯に入った理事長は、その様子を見下ろしながら……。
 しゃなりしゃなりと、歩きまわる。
 ひとりひとりの前で立ち止まり……。
 腰を突きつける。
 見上げる男性からは、無毛のまんこが丸見え。
 ひととおり岩場を巡ると……。
 理事長はお湯を上がる。
 男性客の視線が、背中から尻に纏わりつくのがわかる。
 理事長は振り向くと……。
 流し目を巡らせ、視線の束を絡め取る。
 そして、根こそぎ抜きあげる。
 釣りあげられた男性客は、もう股間を隠そうともしない。
 露天の空を突きあげるちんぽを揺らしながら……。
 亡者の群のように、お湯から上がってくる。
 男性客に囲まれた理事長は、石張りの真ん中に身を横たえる。
 ほら、今みたいな格好。
 もちろん、縄は打ってないでしょけど。
 滴るお湯を、ピチピチの肌が弾く。
 取り囲む男性客が、間合いを詰める。
 男性客の脚の柱が、隣と接するほどに狭まる。
 そう。
 無数の白い柱。
 建築物?
 いえ。
 それは、檻よ。
 まだ発見されてない、古代の遺跡。
 白いエンタシスの檻。
 不思議な意匠。
 そう、檻を成す柱の付け根からは……。
 ことごとく突起が突きあがってる」

「湯気を上げる柱に囲まれた理事長は、ゆっくりと両脚を持ち上げる。
 膝裏を掬い取り、長い両脚を自らの上に畳みこむ。
 もちろん、股間は剥き出し。
 股間どころじゃない。
 綺麗に剃りあげた肛門まで、湯気の中に晒してる。
 突然、檻が崩れた。
 股間の延長線上にいた男性客が、理事長にのしかかるように腰を落とした。
 理事長の真上から、しゃがみこむ。
 片手で自らの陰茎を掴み、切っ先を押し下げる。
 その延長線上に開くのは……。
 もちろん、理事長のおまんこ。
 そう。
 泥を噴きあげる温泉のように、無数の泡が生まれてる。
 男性は一気に尻を落とし、陰茎を突き刺す。

『わひぃ』

 理事長の口から、はしたない嬌声が噴きあがる。
 男性は、激しく尻を振り立て始める。
 陰毛に覆われた男性の恥骨が、理事長の陰核を容赦なく叩く。

『はひ。
 はひぃっ』

 理事長は顔を持ちあげ、居並ぶ男性を見回しながら、歓びの声を振り撒く。
 湯気が、ピンク色に染まる。
 男性の檻が、一気に崩れた。
 理事長にのしかかり腰を使う男性の後ろに、もうひとりが重なる。
 その男性の陰茎は、目印のように赤く縁取られた肛門に突き立った。
 ズブズブと埋もれていく。
 渾身の嬌声を噴き上げようとしたけど……。
 出来なかった。
 すでに、声の出口を塞がれてたから。
 そう。
 もう、ほかの男性の陰茎が、口の中に突っこまれてたの。

『ふが。
 ふががががが』

 太い陰茎が、口中を犯す。
 男性の陰毛が、鼻に入るほど突きこまれる。

『げふ』

 吐き出せない。
 一気に涙が滲み、視界が霞む。
 男性は、容赦なく挿出を進める。

『ぶふ』

 鼻汁が噴き出る。
 上下する陰茎に、カエルの卵のように貼り付く」

「『ごぼ。
 ごぼぼ』

 理事長の腹筋が浮き上がり……。
 口の端から、吐瀉物が噴き零れる。
 苦痛と悦楽に翻弄され、脳漿が沸騰する。
 握りしめた両拳の中にも、陰茎は一本ずつあった。
 汗を噴き出す脇の下にも挟まってた。
 もちろん、お腹の上に乗りあげた男性の陰茎は、乳房の谷間で擦られてる。
 突き上げた足裏にも感じる。
 熱い肉棒が、足裏の襞を研ぎ下ろしてる。

 全身を犯される歓びと苦痛。
 声に出せない絶叫が、黒々と穿たれた尿道口から噴きだした。
 奔流が、挿出される男根を直撃し……。
 扇形に開いた飛沫に、孔雀の羽のような虹が掛かる。

『イ、イク!』

 まんこに突っこんでる男性が、声を裏返す。
 挿出がさらに速まり、腰の輪郭が消える。

『あぁ、あっ。
 あっ。
 あっ』

 男性は、塑像のように凝固した。
 尻たぶだけが、激しく収縮してる。
 弾丸みたいな激しい射精が、理事長の子宮に撃ちこまれる。
 何発も。

『うぉぉ』

 肛門に突っこんでた男性も、うめき声を上げた。
 石張りを滑りながら前後してた腰が、理事長の尻に密着して止まる。
 甲板みたいに浮きあがった腹筋が、プルプルと震えてる。
 もちろん理事長は、腸内に激しい射精を感じてる。
 暗黒の洞穴の中で、白い精液が、腸壁を埋め尽くしてく。

『あぉっ』
『あぎゃ』

 足裏に、ちんぽを擦りつけてた2人の男性が、奇声とともに暴発した。
 両足、同時に。
 中空にほとばしる精液が、歌舞伎の蜘蛛の糸のように散華する」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-14

先生は、長い旅から帰ったように、ほっと息を継いだ。

「理事長。
 いかがでした?
 面白い話だったでしょ?」
「お願い……。
 もう、下ろして……」
「乗りの悪い人ね。
 長話したら、ノド乾いちゃった。
 理事長。
 プールのお水、ちょっといただきますわね」

 あけみ先生は、水槽を抱えこむように、その場にしゃがみこんだ。
 折り畳まれた両脚は、水槽を挟んで大きく開いてる。
 相臀の尖りが床を指し、Wの文字を象ってる。
 その中央を、区画線のように縄が渡ってた。

 先生は、両手を水槽の縁にかけ、顔を水面まで突っ伏した。
 水を飲んでるらしい。
 お尻が少し上がり、股間まで覗けた。
 捲れあがった陰唇が、縄を咥えこんでる。
 猿轡された口元みたいにも見えた。

「ぷふぁ」

 先生が、ようやく顔を上げた。

「あー美味しい。
 ちょっとだけ、理事長のお化粧の味がしますけど」

 先生は水槽を抱えたまま、理事長を見上げた。

「理事長も、お飲みになります?
 ノドが乾いたでしょ?」

 理事長は、顔を歪めただけで応えなかった。

「素直じゃないわねぇ」

 先生は、声とともに起ちあがった。
 両手が押し離した水槽が、水面を揺らすほどの勢いだった。

「嫌でも飲んでもらいますわ。
 でも、一回頭が沈んだせいで、だいぶ水が減っちゃったわね。
 ちょっと足そうか。
 美里ちゃん、水道。
 あ、待って。
 いいこと、思いついた。
 美里、こっち来て。
 あなた、おトイレ行きたくない?
 おしっこよ。
 出ない?
 仕方ないわね。
 じゃ、わたしがしようか。
 水飲んだら、少し催したみたいだし」

 先生は、その場で股縄を解き始めた。

「股縄で不便なのは、おトイレなのよね」

 そう言いながらも、先生の指先は滞りなく動き、瞬く間に縄は解かれた。
 白い肌には、縄目がくっきりと印されてた。
 先生の手の平からは、縄が、呪文が解けたみたいに下がってる。
 先生は、無造作に縄を束ねると、自らの首に掛けた。
 縄の首飾りを下げた先生は、古代の女王のようにも見えた。

「さてと。
 どうしようかな。
 おトイレはあるんだけど……。
 邪魔者がぶら下がってるのよね。
 美里、ちょっと水槽押してみて」

 満々と水を湛えた大きな水槽は、ちょっと押したくらいでは動かなかった。

「ダメみたいね。
 いいよ。
 無理に動かしたら、また戻すのがタイヘン。
 邪魔者は、わたしが抱えればいいんだから」

 先生は、水槽ににじり寄ると、理事長の身体を抱えた。

「ふふ。
 暖かい。
 理事長、生きてますね。
 人肌って、どうしてこんなに愛しいのかしら」

 先生は、水槽を跨ぐ形で歩を進めた。
 理事長の身体が斜めに傾ぎ、頭が水槽を外れた。
 代わりに、先生のお尻が水槽の真上を占めた。

「理事長、そんなに動かないの」

 理事長は、懸命に首を動かそうとしてた。
 だって、顔が、先生の股間に埋もれたから。

「そんなに動かないでって。
 また、気分出ちゃうじゃありませんか。
 暴れると、このまま出しちゃいますよ」

 暴れるなと言っておきながら、先生は理事長の頭を両腿で挟みこんだ。
 真後ろに立つわたしには、先生のお尻から、理事長の額が覗いて見えた。
 大人を産み落とす、グロテスクな出産シーンのようだった。

「あー。
 このまま、後ろから犯されたら最高よね。
 美里、あなた、ちんぽ持ってない?
 わたしが魔法使いだったら、すぐさまあなたにちんぽ生やすんだけど。
 あぁっ。
 理事長、顔動かさないでって。
 感じちゃうじゃないの。
 ほんとに、このまま出しちゃおうかな。
 ほほ。
 うそうそ。
 だから、そんなに暴れないの」

 先生は、理事長を抱えたまま、ゆっくりと腰を落とす。
 理事長の額が、先生のお尻に隠れた。

「美里、前回って。
 位置を見てちょうだい。
 ちゃんと便器に、照準合ってる?」

 言われるままに、理事長の背後に回る。
 後ろから見たオブジェは、いっそう異様なフォルムだった。
 先生の上体は、理事長の体に隠れ、ほとんど見えない。
 でも両脚が、理事長の頭から、左右に開いて出てる。
 一瞬、千手観音の姿が脳裏に浮かんだ。
 手じゃなくて、脚を頭から生やした観音様。

「どう?
 合ってる?」

 見えなかった。
 黒い瀧のように落ちる髪が、先生の股間を隠してたから。

「髪が……」
「あ、そうか」

 先生は、理事長の頭を探ると、髪を束ねて持ちあげた。

「あ」

 見えた。
 お臍は、理事長の頭に隠れてたけど……。
 下腹部の中央を真っ直ぐに下りる縄目の跡は、くっきりと見えた。
 そして、その下。
 さっき縄を解いたときには、萎んだ花のようだった陰唇が……。
 捲れあがって開いてた。
 湯煎した肉のような襞々から、雫が垂れてる。
 真っ赤な膣前庭まで覗いて見えた。

「どうよ?
 位置」
「あ……、いいと思います」
「ちゃんと見ててよ。
 わたしのおまんこが、おしっこ出すとこ」

 先生の太腿に、強張りが走った。
 膣前庭がうねり、黒々と穿たれた尿道口が、息づくように膨れた。
 刹那……。
 溶け崩れた花芯が、水流を噴き出した。
 水流が水槽の縁を叩き、プラスチッキーな音が立った。
 先生は、すぐさま腰を引き、角度を調節した。
 音は、水が水を穿つ、くぐもった響きに変わった。
 水の柱が、水中に突き刺さってる。
 生まれた無数の小さな泡が、先を争って水面に向かった。
 透明なフレーム越しに見えた、不思議な水の饗宴。
 でもそれは、あっという間に終わった。

「あー、出た。
 どう?
 ちょっとは、色、着いて見える?」

 あけみ先生は、理事長を抱えたまま上体をひねり、水面を覗きこんだ。

「ほとんど、わかんないわね。
 こんなことなら、アリナミン飲んどけば良かった。
 ビタミンB2剤飲むと、おしっこが黄色くなるの知ってる?
 栄養ドリンクでもいいのよ。
 おしっこプレイするときには、やっぱり濃いヤツがほしいものね。
 ま、出しちゃったものは、しかたないっと」

 先生は、理事長を抱えながら後退した。
 理事長の身体が鉛直になったところで、身を離す。
 位置の戻った反動で、理事長はふらふらと揺れた。

「あー、気持ちいぃ。
 おしっこの雫が、太腿の内側を伝うのって、ほんとゾクゾクものよね。
 虫が這ってるみたい。
 美里も今度、やってごらん。
 パンツ穿かないでトイレに行けばいいのよ。
 でもって、拭かないで起ちあがる。
 ツツーって、雫が伝うから。
 背筋までゾクーって来る。
 駅のトイレとかがいいのよ。
 その後、太腿を濡らしながら街を歩くの。
 雨の日なら……。
 トイレ使わないで、歩きながらおしっこしてもいいわ。
 地面が濡れてるから、ぜったいバレないわよ」

 先生は、膝を割って開いてた両腿を、ぴったりと閉じた。
 両膝が着いた。
 足先は少し開いたままだったから、下半身は細身のX型に窄まった。
 先生は、お尻を突き出すようにしながら、両腿を摺り合わせ始めた。

「あぁぁ、いぃ。
 おまんこが、いくらでも雫を垂らすわ。
 このままイッちゃえそう」

 上体を屈めた先生は、顔だけ持ちあげ、理事長を見た。

「でも……。
 お待ちかねですよね。
 あんまり、待たせちゃ悪いから……。
 お楽しみは、取っときましょう」

 先生の両脚が、真っ直ぐに伸びた。
 スカートの似合いそうな、綺麗な脚だった。
 その脚で踵を返すと、先生は作業台の脇に戻った。

「理事長。
 わたしのおしっこ入りのプール、味わっていただきますよ」

 先生は、手を掛けたハンドルを、ゆっくりと戻した。
 吊るされた理事長が、下がっていく。
 理事長は顔を歪め、腹筋を使って上体を起こそうとした。
 そこで、理事長の下降は止まった。
 先生を振り返ると、ハンドルの手が止まってた。
 慈母のようにも見える微笑みを湛え、じっと理事長を見てる。

「く……」

 理事長の体側に浮きあがった腹筋が、さざ波を立て始めた。

「あぁ」

 力を使い果たした上体が戻り、理事長は真っ直ぐに下がった。
 その瞬間を、先生は逃さなかった。
 ハンドルが一気に廻り、理事長の頭は水没した。

「ごぼ」

 理事長の腹筋が、再び収縮したけど……。
 もう、間に合わなかった。
 水没した顔面はフレームに阻まれ、逃げ道は無かった。
 はかない抵抗を、2,3度繰り返した後……。
 理事長の腹筋が伸びた。
 耳の下まで浸かった顔が、わたしの方を向いてた。
 両目は、筆で描いたように閉じてる。
 上唇は捲れてた。
 齧歯類みたいな綺麗な白歯が覗いてる。
 背中から見える手の指は、眠る赤ん坊のように空気を握ってる。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。